Brahms 交響曲第1番ハ短調/ハイドンの主題による変奏曲
(オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団)


Warner 4043382 Brahms

ハイドンの主題による変奏曲 作品56a(1954年)
交響曲第1番ハ短調 作品68(1956/57年)

オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

Warner(EMI録音) 4043382

 オットー・クレンペラー(1885ー1973)往年の録音は、多数パブリック・ドメインとなって気軽に拝聴できるようになりました。”若手クラシック・リスナー”(=ワシ)はやがて”オールド・ファン”への入り口に差し掛かり、東芝EMIはWarnerに変身、それはPHILIPSレーベルが消えた以上の違和感でした。「存在が意識を規定する」のは当たり前、若く貧しかった頃は”安い”ことこそ第1優先順位、著名かつ高価な”名盤”は聴けなかったんです。音質云々なんてもってのほか、音楽はまず聴いてこそ!(当時)文句など云える立場に非ず。

 やがて幾星霜。

 音楽拝聴にさしたる経済負担はなくなり、オーディオ環境はその道の手練に嗤われる(安物)水準であっても、それなり”音質”は気にするように。定評ある一昔前の巨匠を聴くべき時は熟しました。クレンペラーってほんま聴いていなくって、せいぜいBach くらい?それはさすがに大時代のバロックですから、基本”古楽器派”ですし。一連のBrahms 録音中、唯一のモノラルである「ハイ・バリ」始まりました。強奏部分ちょいと音は濁るけど、音楽の姿を堪能するに充分な水準であります。正直なところこの作品、好きでもなんでもないけど、荘厳シンプルな”聖アントニーの主題”を自在に操って作曲技法の粋を集めた名作であることに間違いなし。華麗なる加齢を重ね、こんな重厚な佇まい作品も素直に聴ける精神状態に至りました。

 立派な演奏、上手いオケやなぁ、表現としては重心が低い。木管が浮き立って、各声部、変幻する主題が明快にわかりやすい。要らぬ恣意的テンポの揺れや、重苦しく思わせぶりな表現上のタメもない。浪漫はほのかに香るけれど、濃厚粘着質恣意的なものに非ず、巨匠世代(フルトヴェングラーの一歳上)なのに時代を感じさせぬ、ていねいな仕上げと表現〜ナント60年前でっせ。

 交響曲第1番ハ短調第1楽章「Un poco sostenuto - Allegro」〜もの凄く立派、威圧感たっぷりに始まりました。わずか2-3年後、ステレオの威力は絶大であります。時代を勘案すれば賞賛に値する音質水準(しかも、歴代マスタリングを熟知されている方によると改善顕著との情報有)チェロが正面、第2ヴァイオリンが右に来る対向配置(結果各声部旋律がわかりやすく響く)、提示部繰り返しなしは残念(記号通り演ってくれ!)。中庸なテンポ、ティンパニを強烈に叩かせて衝撃や絶大、しかし管楽器は明るくその存在を主張してわかりやすい。推進力充分だけれど、けっして走らぬ適正な緊張は続きます。ラスト緊張は緩和して静かに、そのまま第2楽章へ〜

 第2楽章「Andante sostenuto」。独墺系名立たるオケに比べれば、弦はずいぶんと清廉でしょう。管楽器も明るいのに、けっして腰の軽い、薄いサウンドに非ず。木管のニュアンスに聴き惚れるべき緩徐楽章であります。各声部は明快バランス抜群、ここも纏綿朗々とした表現ではなく、意外とさっぱりとした(粋な)味わい続きました。ヴァイオリン・ソロは誰ですか?当時のコンマスか。控えめにそっと、優しく弾いておりました。

 第3楽章「Un poco allegretto e grazioso」は湧き上がるような感興がやがて大爆発!しても良い楽章。貫禄はあっても基本抑制表現であって、優雅な(grazioso)かつ淡々とした表現となっております。ここまで各楽章は必ず静かに収束していくんだな。第4楽章「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」も第1楽章同様もの凄く立派、威圧感たっぷりなところ。ぐずぐず過去楽章の断片が回帰するのは「第九」の風情でしょう。

 そしてホルン登場(デニス・ブレインなんだそう)深々として明晰、エエ音ですね。それを受けるフルートは鮮烈そのもの(ガレス・モリスですか?)鳴り続けるティンパニに乗って、この辺りフィルハーモニア管弦楽団の管楽器群腕の見せどころであります。やがて「喜びの歌」主題は清潔さっぱりとした弦、そして明るい木管に引き継がれ、この辺りほんま(歌のない)「第九」クリソツ。いくらでも煽って盛り上げ可能なところに力み、余計なルバートもなし。重心は低いが、鈍重に非ず、響きも暗くはない。ラストのテンポ変化も適正、クリア、クールなバランスを失わない。

(2014年7月5日)


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written by wabisuke hayashi