Brahms 交響曲全集(パーヴォ・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団)
交響曲第1番ハ短調 作品68 パーヴォ・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団 ONDINE ODC 990-2T 2000年録音バーデンバーデン・フェスティヴァル・ホール・ライヴ 3枚組 950円(中古) ご近所BOOK・OFF値付け間違いと想像される950円(3枚で)で購入。苦手方面Brahms 交響曲(室内楽・ピアノ曲は全然平気)ながら、名曲と認めるのには吝かではないワタシ。CDが安ければ聴きます。ましてやごく最近、2000年5月の録音。しかも敬愛するパーヴォ・ベルグルンド(ベルリントとか、呼ぶのが正しいそうな)でしょ?@300ちょっとだし。 このCD、ぜひ聴いていただきたい。いえいえ、お薦め、という意ではありません。発見バリバリなんです。「もぉ、こんな有名曲ばっかりぃ」なんて思っている人(含むワタシ)にはこの録音は必需品です。なんせ全然ちゃうもの、ほかとは。室内管版Brahms 交響曲って、ほかマッケラスがありましたっけ?(未聴) 結論から言います。ワタシはダメです。この演奏。楽しめません。新しい(高い)CDを売り払った某の気持も理解できないはない。録音も良くないのかな?奥行きとか、響きの総和とか、そんなの全然なくて、うす〜い弦、溶け合わない管楽器、中低音の重心が定まらない。技術的にはバッチリですよ、アンサンブルも悪くない。個々の演奏家〜例えばオーボエだってじつに美しく、セクシーな音色です。 ヨーロッパ室内管といえば、アーノンクールとの刺激的かつ過激なるBeethoven の全集を連想します。いうまでもないが、ベルグルンドとは表現の方向性は違いますね。もっとオーソドックス。穏和。なぜ室内管を使って録音したのか?Brahms を室内管弦楽で演奏する、という意味合いについて考えさせられます。 もう一方で、例えばMozart 、Haydnを室内管編成で、ということの違い、Beethoven 、Schubert でも同じです。例えば古楽器を使うことでも結論は同じだけれど、表現したい意欲に相応しい媒体(この場合ヨーロッパ室内管)を使うと言うことでしょう。果たしてそれは成功だったのか。Brahms の交響曲の魅力ってなんなのか? Brahms って、響きの総和を楽しむもんなんですね。このCDを聴いてはっきり思いました。各パートが明確に、対等に音を出し合って、いままで気付かなかった内声部(第2ヴァイオリン?ヴィオラ?)もバッチリ聞こえます。でも、それが?という感じ。(はっきり言って、そのリズムの刻みが少々機械的に感じました。これは若いオーケストラの責任か) 響きの渦に埋もれていた旋律の発見を、新鮮な感動として受け止められるかどうか。たしかに、散々Brahms なんて、ね、少々食傷気味、なんてほざいているアホ(代表;ワタシ)には良い薬なんですが。なんせ、いままでのイメージ一新ですからね。但し、もっと過激なる表現でも良かったかなぁ。ベルグルンド自体は穏健派だと思うので。
・・・と、ここまで執筆して約二週間経過。 〜しつこくしつこくBrahms 交響曲全集(パーヴォ・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管)きょうだけで全曲2回通し。問題の多い演奏なんだけどね、「読書百遍、意自ずから通ず」の精神でこれで何度聴いたのか?土門拳は真贋を見極めるのに、「比較」ではなく、ひたすら対象物に集中したという・・・それに学んで(月とスッポンの差が存在するが)。ようやく、この演奏の「新しい美しさ」みたいなものが見えてくる思いで、書きかけのサイト用原稿にも大幅加筆修正が必要〜(拙「音楽日誌」より) Brahms の交響曲は重厚であるべき、という先入観から大きく外れます。ワタシはこの威圧感を嫌います。しかし、響きあい、混じり合うべき旋律がバラバラに聞こえてくる〜これには同意できない。だから、とりわけて威圧感の強い第1番ハ短調交響曲の違和感がもっとも強いはずです。 そうだねぇ、ちょうど我が愛車・セルボ(軽・中古650cc)が急坂を上っているみたいな、ムリがあちこち感じられました。ボウリングの球が、じつはもの凄く軽かったからピンを倒せない〜みたいな印象もある。 でもね、よくよく聴くとベルグルンドの表現はオーソドックスで、細部までていねいに歌っているんですよ。室内管弦楽を使用した意図はまだ見えません。ただ、先入観から来る違和感を克服すれば、いろいろ音楽は聞こえてくるんですよ。なんせゴマカシきかないから。きっちりしてるの。このオーケストラのサイズだと。 比較的静かでゆっくりの作品やら、楽章の美しさが際だちます。第4番ホ短調交響曲の静かな部分〜これ、聴きものですよ。普段、聴き慣れない内声部に聴き惚れるのもヨロし。有名なる第3番ヘ長調交響曲の第3楽章「ポコ・アレグレット」(さようならをもう一度)の楚々とした清潔感。透明であること。そうだなぁ、「ジークフリート牧歌」みたいな感じかな。 第2楽章ニ長調交響曲が白眉でしょうか。透明でクセがなくて・・・コレ、おそらくオーケストラの特質なんでしょうね。もの凄く各パートは上手いけど、コク、というか個性は足りない。響きが薄いから物足りない(ライトビール?風か)かもしれません。この明るく穏和な作品には、一種こういう清々しくも大人し目の表現も悪くないものです。 繰り返します。ワタシはBrahms の威圧感を嫌います。だからこの全集は、なんどもの再聴に耐えるとも言えるのでしょうか。特異なる存在感を主張する3枚。如何。(2003年2月14日)
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