Brahms 交響曲第2番/第3番(バルビローリ/ウィーン・フィルハーモニー)
交響曲第2番ニ長調 作品73 ジョン・バルビローリ/ウィーン・フィルハーモニー ROYAL CLASSICS ROY6434 1966/7年録音 3枚組2,000円ほどで購入(したはず) これは昔から有名な録音でしたが、LP時代(生前と言うべきか)日本では評価が低くて、廉価盤の安売り対象でした。このひと、イギリスではほんとうに人気があったが、我が国では亡くなってから評価が進んだように思います。ワタシはBrahms 、TCHAIKO辺りの交響曲は苦手ながら、バルビ節なら聴いてみたい。チェリの昔の録音に触発されたせいも有。 例の如しでEMI特有の奥行きのない録音ながら、これほどゆったりとした気分にさせられる、極上に美しい演奏は滅多にありません。 ニ長調交響曲の第一楽章は、まだまだ様子見。いや、これとて文句ない水準だけれど、第2楽章の夢見るような歌い口、ふと立ち止まるような自然な間。余韻。これを聴いて初めて気付く貴重な「名曲である確信」体験。横流れのバルビ節は、もう、これでもかっ、というくらいに歌って歌って酔うよう。村の古老が、昔語りの情熱的な恋愛を語っているような、思い出の中だけに昇華された花の可憐さ。 弦、ホルン、オーボエ、フルート、どこをとっても文句ない深さだけれど、個々人の技量より、全体が解け合った調和が美しい。リキまず、激高せず、諄々とした語り口は、滅多に経験できないワザでした。第3楽章のなんの変哲もない弦の旋律が、黄金に変わっていました。 終楽章。カルロス・クライバーの推進力を知っているワタシは、この演奏を「ユルい」とするか「余裕」と見るか、判断に一瞬迷うところ。これは当然「余裕」の歌心でしょう。同じウィーン・フィルながら、素人のワタシにはこちらが「いかにもウィーン・フィル」と素直に感じられます。小さい音量で、そっとそっと開始するのがいかにもバルビらしい。美しく、強い。響きの厚みが失われない、この組み合わせは極上です。いつもながら思うのは、このような演奏スタイルはここ最近消えてしまった、という結論でした。 ヘ長調交響曲には第3楽章「ポコ・アレグレット」の激甘演奏を期待したいところ。第1楽章から存分に朗々と詠嘆してくれて、この引きずり方にはすっかりハマりそうな甘美。ウィンナ・ホルンの割れた音色が、なんとコク深いこと。ゆるやかに深呼吸するような〜よう知らんがヨガの呼吸法のような〜心やすらかな表現。 アンダンテでは、クラリネットを始めとする木管群が極上の響き。こういう静かな楽章はバルビローリの独壇場でしょう。オーケストラの各パートが、順繰りに懐かしくも美しい思い出を語るんですよ。やや散漫な録音だけれど、こんなトロリとした世界は滅多に見られないかも。 映画音楽にもなった第3楽章は、意外にもそっと、抑制されたものでした。はじめてこの演奏を聴いたときには、やや期待外れだったが、心の奥に潜む哀しみは泣き叫ばないほうが伝わりやすいもの。これで良いんです。しずかに、サラリと見えて、じつはそうとうに細かい配慮(そしてウィーン・フィルの極限の美しさを)聴き取りたいもの。 終楽章には力強さが足りない〜そう感じる方がいらっしゃるかも知れません。この楽章、リキめばリキむほど、じつは交響曲として尻切れトンボ的な、中途半端な印象になりがち。第2番と同じように、弱音で始まりますが、じょじょに相当濃厚に、存分にしつこい表現で盛り上がります。前半が抑制されていたのは、この楽章との対比のためだったのでしょうか。やがてテンポを少しずつ落として、黄昏の赤い夕日のような終末を迎えます。(2001年7月6日)
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