Berlioz 幻想交響曲
(ピエール・モントゥー/北ドイツ放送交響楽団)


懐かしいコンサートホール盤 Berlioz

幻想交響曲

ピエール・モントゥー/北ドイツ放送交響楽団

コンサートホール・レーベル 1964年録音

 一番最初に入手したCD(記憶では2,800円)はやがて処分済(後悔)、手頃な価格での再入手を狙ってとうとう出会いがなかったもの。仕方がなくこれはyoutube(おそらくLP音源)から音源抜き出して作成した自主CD也。覚悟して聴いているせいか、音質云々は気にならない。最晩年89歳のモントゥーはハンブルクの北ドイツ放送交響楽団と数枚の録音を残して、衰えの微塵も感じさせぬ上品な演奏であります。第1楽章提示部繰り返しなし、第2楽章にコルネットが加わらないのは残念、バランス感覚と歌心に溢れて、お気に入りの演奏也。
(「音楽日誌」2016年6月より)
 温故知新(ばかり)。Beeやんの第九わずか10年後に登場した稀代の革新的名曲「幻想交響曲」との出会いはユージン・オーマンディ(1960年)。やがて幾星霜、細部旋律は馴染みでも”今更「幻想」”的不遜な感慨に至って拝聴機会は減っておりました。ここ数年、華麗なる加齢世代を迎えて、懐かしく美しい旋律+多彩な響きを再確認してここ最近、拝聴機会は増えつつありました。この作品は長命を保ったPierre Monteux(1875ー1964仏蘭西)十八番(おはこ)これは逝去の年、89歳の記録でした。音質云々は(このレーベル)もともと期待していないし、youtube流用だから文句も言えません。

 第1楽章「Reveries, Passions(夢、情熱)。細部ていねいな仕上げ、常に適正を感じさせるテンポの動き、晩年のご老人とは思えぬ精気漲(みなぎ)るテンションに力みはありません。驚くべきはオーケストラの優秀なこと、ハンス・シュミット=イッセルシュテット(在任1945ー1971年)長期政権の時代でしょう。アンサンブルが整っているとか、そんな水準に非ず各パートの深い味わいある音色は音質乗り越えて伝わります。(13:50)第2楽章「Un bal(舞踏会) 。力強い推進力、湧き上がる感興に厚みのある響き+粋なリズム感、語り口の上手さは健在でした。ラストのテンポ・アップはなんと若々しいこと。(5:57)第1楽章の繰り返し、第2楽章のコルネット挿入、ないものねだりをしても仕方がないけれど、残念でした。

 第3楽章「Scene aux champs(野の風景) 。この楽章、若い頃は退屈で苦手でした。華麗なる加齢を重ねた現在なら物憂い羊飼いの笛、彼女の幻影の登場に締め付けられる胸の不安、すべて納得し共感できて、モントゥーは颯爽とリズミカルに進めて華やかにやがて爆発しております。そして日が暮れて静寂がやってくる。ティンパニの遠雷・・・(音質云々乗り越えて)弱音のコクのある響きはこのオーケストラの力量を物語って、弦も木管も文句なく美しいもの。(15:25)

 第4楽章「Marche au supplice(断頭台への行進)。ここも繰り返しなし。テンポはあまり急がず、煽らず、走らず、リズムをしっかり刻んでオーケストラの力感をしっかり生かした表現。解像度のよろしくない音質だけど、金管の厚みのある充実した響きを聴き取ることは可能です。ラスト微妙なテンポアップも自然。(4:59)

 第5楽章「Songe d'une nuit du Sabbat(魔女の夜宴の夢) 不気味な楽章にも抑制と気品を感じさせました。第1楽章の美しい「愛する人のテーマ」はグロテスク(木管のユーモラスな躍動)に変貌して、やがて鐘に導かれて「怒りの日」登場。この主題はフクザツ発展して、やがてクライマックスへ。ややテンポを落としてあわてず、じっくり描き込むモントゥーのワザは見事でしょう。オーケストラは全力で鳴り切っても響きは濁りません。ま、濁りがちの音質なんだけど。(9:59)

(2019年12月8日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi