The Berlin Project(Weill /Schillings/Schreker)


VOXBOX CDX5043 Weill

音楽劇「三文オペラ」より組曲(1929)

ジークフリート・ランドー/ウエストチェスター交響楽団(Music for Westchester Symphony Orchestra 1974年録音)

クォドゥリベト 作品9(1922/26)

ジークフリート・ランドー/ヴェストファリャ交響楽団(リックリンハウゼン)

ソング劇「マハゴニー市の興亡」(1927/30年)

ルーカス・フォス/イェルサレム交響楽団(歌手不明)

管楽合奏とヴァイオリンのための協奏曲 作品12(1924年)

ヨースト・ミヒャエルス/デトモルト管楽アンサンブル/ラウテンバッヒャー(v)
*1970年代前半の録音

Schillings 

組曲「モナ・リザ」作品31

ジークフリート・ランドー/ヴェストファリャ交響楽団(リックリンハウゼン)

Schreker 

バレエ音楽「女王の誕生日」

アルトゥール・グルーバー/ハンブルク交響楽団

VOXBOX CDX5043 2枚組1,800円ほどで購入か(録音年情報不明)

 今となっては単価も安いとは言い難くなったが、収録作品、演奏者とも貴重で珍しいものだと思います。1991年発売当初に購入。1920〜30年代のベルリンを舞台とした、ちょっと薄暗くて妖しい雰囲気の作品ばかり。このサイト開設当初から掲載していたものだけれど、加筆ではなく全面書き替え〜って、前の執筆があまりに無内容だったので。ジークフリート・ランドー、ルーカス・フォス、ヨースト・ミヒャエルス、アルトゥール・グルーバー・・・VOXならではの指揮者陣も楽しみ。

 知名度がある作品は「三文オペラ」くらいかな?これは歌は入らなくて、短い管弦楽エピソード8曲で計22分ほど。「マック・ザ・ナイフ」ってジャズのスタンダードになってますよね。エッチなサックスやら安っぽい太鼓やら、ちょいとノンビリ気怠い味わいがあって、「交響楽団」になっているけど、そんなたいそうな編成じゃありません。弦楽器はないんじゃないかな?

 演奏は生真面目であってジャズ風のノリノリじゃないにせよ、バンジョーやらピアノも入って楽しげです。ま、これだけ聴いても・・・少々物足りないというか、やはり歌芝居(ソング劇)全部聴きたいもの。サワリを少々・・・といったところか。

 「クォドゥリベト」(Quodlibet〜「ごたまぜ」、「寄せ集め」、ここでは「貴方のお気に入りはなんでも」の意か)の出典がよくわからない。「魔法の夜」(パントマイム〜子供向け)が1922年に初演され、失敗だったらしいが、現在完全な楽譜は存在しないとのこと。そこからの再構成音楽(4楽章)ですか?26分ほどの本格的交響作品。貴重な録音だと思います。(ネット検索を掛けると1件のみヒット)

 第2楽章はかなり激しい響き、第3楽章のティンパニをベースにした怪しい雰囲気、難解ではないが、全体として様子がよくわからない。メルヘンのような優しい旋律じゃないし、華やかさもないですね。もしかしたらランドー率いるオケに表現上の問題があるのか。終楽章にはカスタネットも入り、目覚ましい旋律の躍動がやってきました。

 歌芝居「マハゴニー市の興亡」は、ここでは23分ほどの収録です。解説が良く理解できず、1927年の「小マハゴニー」がこれなのか、1930年にそれを拡大して完成させたものから抜粋なのかはわかりません。歌い手のクレジットがないけれど、フォス率いるオケ含め、抜群のノリと楽しさ。上手さ。

I tell you we must die! I tell you we must die!
I tell you , I tell you, I tell you we must die.
ここはワタシでも聴き取れる有名な「アラバマ・ソング」。旋律的にかなり前衛的なものも頻出して、たんなるポピュラー系の音楽ではない。もう、ほとんどオペラと言っても良いでしょう。歌い手もクラシックな表現が基本だと思います。イェルサレム交響楽団は意外と達者な演奏なんですね。

 ヴァイオリン協奏曲は恐るべき晦渋な音楽でして、30分に及ぶ大曲。これは「三文オペラ」とは大きくかけ離れた、不機嫌で無機質な音楽です。ラウテンバッヒャーのヴァイオリンはリリカルに、美しく歌います。素晴らしく安定した技巧。管楽のみのバックというのは珍しく、第2楽章ではシロフォン(大活躍!)がユーモラスな味わい出してます。バスのピツィカートも入る。でも、やっぱり情感の音楽じゃない。

 終楽章「アレグロ」は機嫌が直らないまま、ややテンポアップして、ティンパニのアクセントが幻想的な金管に絡んでクライマックスへ・・・って、暗鬱さの薄いShostakovichみたいな感じですか?けっして凡百な作品ではなくて、慣れるとやみつきになる(かも知れない)作品。お好きか方はいらっしゃることでしょう。滅多にCDで売っていない作品だけれど。(ツインマーマンのがあったか)

 Schillings(1868〜1933)マックス・フォン・シリングスは、歴史的録音でも指揮ぶりを聴くことは可能なはず。(フルトヴェングラーの先生筋ですか?)「モザ・リザ」は歌劇からの管弦楽組曲でして、R.Straussが初演した、とのこと。ネットで検索してみるとヘーガーの全曲盤が存在するみたいです。24分強の作品でして、おそらくLP時代は「クォドゥリベト」で裏表一枚だったんでしょう。

 その「クォドゥリベト」とはうって変わって、甘く優しい旋律が粛々と流れます。この時期としてはずいぶん保守的というか、コルンドルトなんかに通じるもうひとつの系譜なのかな?初期Scho"nbergをいっそう安易に大衆化させたようで、これはもっと演奏機会が増えてもおかしくない佳曲。

 Schreker(1878-1934)フランツ・シュレーカーも、ブゾーニ(Busoni)の後任としてベルリン音楽大学総長迄務め、生前はR.Straussに匹敵する人気があったとのこと。いやはやこれはまったく楽しげで、カスタネットやらマンドリンやら、明るく幸せな音楽です。やや肌理は粗いが、オケも躍動感溢れてユーモラス。(オーボエが雄弁!)近年、日本でも演奏会で取り上げられる機会が増えている作曲家と思います。

 結論!マニアックで貴重な音源満載〜音楽を聴く幅を広げて下さる素晴らしいセットです。この一文執筆現在ネットで検索してもほとんど(入手用カタログとしては)出現しないが、渋谷のタワーレコードでは目撃いたしました。(2005年1月20日)


さっそく、読者より追加情報有。

Berlin Projectの「三文オペラ」オケはWestchester Symphonyで"t" が抜けていますね。(修正いたしました)

ウェストチェスター郡はニューヨーク市唯一の大陸に位置する区であるブロンクスの北隣にひろがる高級住宅地です。 ブロンクスがニューヨークで恐らく一番危険で貧しいのとは対象的ですね。ちなみに、私の北米駐在時代(1988 - 1995) は家賃が高くて、私ごときが住めるようなところではありませんでした。秋は紅葉が美しく、春は新緑が美しい。

さて、Westchester Symphonyは、アメリカ各地にあるコミュニティー・オーケストラの一つで、プロフェッショナルなオーケストラです。 例えば、大植英次がミネソタの前に振っていたエリー響などもそうですね。現在は名称をウェストチェスター・フィルハーモニックと改称しているようです。 音楽監督はパウル・ダンケル(Paul Lustig Dunkel)。有名なところではジョシュア・ベルなども客演しているようですよ。

一説によりますと、アメリカの大学で音楽を専攻した学生が毎年3万人ほど卒業するのだそうです。彼らの就職先としてこのようなコミュニティー・オーケストラがあ り、さらにオーディションを受けて、上のランクのオーケストラに移って行く、という構図になるようです。


更にK氏より詳細情報有。了承を得て掲載します。

さて、ワイルの件ですが、組曲三文オペラが唄なしなのには理由がありまして、劇場での大ヒットでワイルはこの作品の音楽に関してワイルの権利を確立するためにこの組曲を作ったと言う事でして、(一説にはクレンペラーの忠告に従って作ったと言われてもおります)。共作者のブレヒトは人の著作権は無視し、自分の著作権はえげつなく主張する人として今でも有名ですから、ワイルとしてはこの組曲に歌詞は絶対に入れられなかった訳でございます。

「マハゴニー」(ソングシュピール)は1927年の作品に間違いないのですが、1930年に初演されたオペラ「マハゴニー市の興亡」からブレヒトの劇団であるベルリナーアンサンブルが短縮版「小さなマハゴニー」と言う作品を作り独自のレパートリーにして東ドイツでは録音も出ており、共に”小マハゴニー”と呼ばれており、プロ、素人に拘わらず混同している人は結構いるみたいです。上記団体以外に「小さなマハゴニー」は録音されていないはずですので、5つの歌詞で構成されていれば全て1927年の作と思って結構でございます。

ヴァイオリンコンチェルトは林様の書かれていた通りの曲で、見事な御解説に思わず拍手致しました。 ただ、この曲は珍しい曲では決してありませんで、既に録音が20近くあります。 しかしながらこの曲がメインとなった録音が皆無状態でして、他のワイルの作品の余白スペースに常にひっそりと収められている状態が普通の為、インターネットでの検索にひっかからないと言う非常に気の毒な作品でもあります。

力作でありながら添え物の為、なかなか本気の演奏にもめぐり合えず、おまけに周囲をアクの強いワイルの有名作品で挟まれている為、ワイル好きは必ず複数の演奏を所持しているにもかかわらず、殆ど感想を聞けない作品でもありますので、この度の林様の文章にはワイル好きを代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

「クォドリベット」の元の「魔法の夜」に関しては現在再現版の録音が出ておりますが、その原典に関してはこのパントマイムバレエの振付師ウラディミール・ボリッシュの作であると言う事しか判っていないそうです。有名な話はこの作品に後にワイルの伴侶となるロッテ・レーニャが出ていてそれをワイルが憶えていたと言う運命的な作品であったということでしょうか。

(2005年3月6日)


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written by wabisuke hayashi