Berg 室内協奏曲/3つの管弦楽曲/アルテンベルク歌曲集
(ピエール・ブーレーズ/BBC交響楽団)


ERATO RECD-2831 Berg

室内協奏曲
ダニエル・バレンボイム(p)/サシュコ・ガヴリーロフ(v)
3つの管弦楽曲 作品6
アルテンベルク歌曲集 作品4(ペーター・アルテンベルクの詩による5つの管弦楽伴奏付き歌曲)
「心よ、吹雪のあとのおまえは」「雷雨のあとの森を見たかい」「君の想いは遙かな宇宙の彼方へと向けられ」「我が心に転機は訪れず」「ここには安らぎがある」 ハリーナ・ルコムスカ(s)

ピエール・ブーレーズ/BBC交響楽団

SONY 88843013332-CD8 1967年録音

 2019年秋、かなりの量のCDを一気処分して、最終的には「0」=断捨離を目指しております。あれは高かった、苦労して入手した、彼(か)の感動が忘れられない、そんな過去を振り返ってもしばらく聴いていない、8−9割データ拝聴Music Lifeなのが現実です。拠出CDは大胆に選定して残したものには”20世紀”の比率が多いことに気付きました。この辺りが自分のツボなんやなぁ。Pierre Boulez(1925ー2016仏蘭西)42歳、指揮者としてぼちぼち有名になってきた頃、Daniel Barenboim(1942ー亜爾然丁)は当時若手、売出し中のピアニストでした。Saschko Gawriloff(1929ー独逸)は未だ存命中のようです。

 BBC交響楽団はコリン・デイヴィス時代(1967ー1971年)このあとブーレーズが首席指揮者となりました。(1971-1975年)腕利きオーケストラが競合するロンドンでは地味なオーケストラといったイメージがあるけれど、ブーレーズの手に掛かるとクールなアンサンブル、例えばシカゴ交響楽団のようなメタリックな集中力サウンドとは、ちょいと違う素朴な味わいもあります。半世紀前ですもんね。残響少ないオン・マイク、鮮明な音質イメージもあるのか。

 室内協奏曲はピアノ、ヴァイオリンのソロ+13本の管楽器の編成、計33分ほど。冒頭に配された「Motto」音形は師匠やら友人、自らの名前から取ったものとのこと。無調の作品は難解っぽいけれど晦渋に非ず、甘さ漂う第1楽章「スケルツォ風主題と変奏曲」(Tema Scherzoso con Variazioni)、ピアノは神秘にデリケートなタッチ、自在に活躍いたします。オーケストラのメンバーは”ものすごく上手い!”とは思われぬけれど、ブーレーズの統率をしっかり感じさせるもの。第2楽章「アダージョ」(Adagio)に入るとソロは詠嘆のヴァイオリン(ガヴリーロフ)のみ、大活躍。これは静寂静謐のサウンド+オーケストラのリアルな息遣いを感じさせるところ。無機的ではない。第3楽章「序奏とロンド・リトミコ」(Rondo Ritomico con Introduzione)は破壊的なピアノよりスタート、それにヴァイオリンが呼応して・・・というかド・シロウトには各自勝手バラバラに演奏しているとしか思えぬ混沌。神秘緻密な風情継続して、初演は1927年(ヘルマン・シェルヘン)とは・・・そりゃ当時大騒ぎ(乃至無理解)だったでしょう。

 3つの管弦楽曲 作品6は4管編成+α、わずか20分ほどの作品なのにやたらと大編成なのですね。打楽器多彩大人数なのもMahlerを連想させます。この作品を初めて聴いたのは小澤征爾/ベルリン・フィルのライヴ(1989年6月13日)FM放送、やたらと明晰クリア、「間」が足りない印象だった記憶が・・・第1楽章 前奏曲(Praludium)打楽器の合奏に始まり、打楽器の合奏に終わる・・・途中オーケストラの響きは重苦しい行進みたい、アンサンブルは精緻を極めたもの。(5:22)第2楽章 輪舞(Reigen)よう云うで「ロンド」とは。ワルツなんですね、とっても怪しい。ブーレーズはこのオーケストラから官能的なサウンドを引き出して、スケールも迫力もたっぷり大きく、響きは明晰なもの。(5:36)第3楽章 行進曲(Marsch)どこが「行進曲」やねん。足取り重苦しく、よろよろして激高する大きな音楽!ド・シロウトはここに「運命の動機」を聴くのですね(ホルンの叫び)。一歩間違えれば行方不明に至る破壊的難物作品、ブーレーズの手に掛かると各パート鳴り切って、フクザツなリズムもわかりやすく、曖昧なところなく胸に突き刺さります。(9:28)

 アルテンベルク歌曲集 作品4。Halina Lukomska (1929-波蘭)は現代物を得意としていたらしい。言葉の意味もわからぬけれど(独逸語?)表題の意味、情感はしっかり伝わる(これも)神秘の旋律、強靭に洗練された声であります。

(2019年10月13日)

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written by wabisuke hayashi