Beethoven 変奏曲ヘ長調(モルツァー(p))/幻想曲ト長調(ヤンドー(p))/
ポロネーズ ハ長調(中島皇恵(p))/ピアノ協奏曲 変ホ長調(アンダー(p))


Cascade 02200_10  87枚組7,813円にて購入 Beethoven

自作主題による6つの変奏曲ヘ長調 作品34

ロスル・モルツァー(p)

ピアノのための幻想曲ト短調 作品77

イェネ・ヤンドー(p))

ポロネーズ ハ長調 作品89

中島皇恵(p)

ピアノ協奏曲 変ホ長調 WoO.4

エヴァ・アンダー(p)/ペーター・ギュルケ/ベルリン室内管弦楽団

Cascade 02200_10 87枚組7,813円にて購入

 一気87枚組”オトナ買い”の醍醐味は、このような未知の作品との出会いにあるのでしょう。昔馴染みの旋律を、詳細細部比較していくことも音楽の楽しみ方に間違いないが、ワタシのような生来の三日坊主性格にはこのような聴き方が似合っている。いわゆる”寄せ集め音源”であって、ヤンドーはNAXOS音源、エヴァ・アンダーはEDEL/BerlinClassicsの意欲的な9枚組(この音源は、この87枚組ボックスに多く収録される)よりの流用。ロスル・モルツァー(読み方エエ加減)、中島皇恵さん辺りになると元音源は類推は付きません。

 寄せ集め音源の難点は、作品毎に音質が変わってしまうこと(演奏の質にもよるが)ですね。CD一枚分聴き通すと、そんな要因で集中力が阻害されることもあります。閑話休題(それはさておき)

 6つの変奏曲ヘ長調 作品34は1802年32歳の時の作品で、有名な「エロイカ変奏曲」と同時期の創作。優しく始まり、やがて彼らしい暗い激情を感じさせる葬送行進曲も登場します。全体に上機嫌な、熟達の名曲、そして演奏、録音。しっかりと安定した技巧、粒の揃った音色でした。さきほど”未知の作品との出会い”とエラそうに書いたけれど、なんのことはないイェネ・ヤンドー(1992年NAXOS)のCDを棚中に発見しました(十数年前に聴いている〜はず)。14:54。

 幻想曲は、ほの暗い出足から華麗な指運を誇る劇的旋律連続します。イェネ・ヤンドーは安定した技巧と手堅い表現であって、これこそ初耳作品をしっかり堪能させてくださいました。Mozart を連想させ、いっそう激しさ+厳格さを加えたようなテイスト。10:25。おそらくは1990年代の録音でしょう。

 ポロネーズは、まるで「皇帝」の冒頭のような華やかな開始であり、Chopin で馴染みの弾むようなリズムの舞踏が続きます。印象としては”生真面目なるChopin ”、中島さんの録音はおそらく1960年代なんでしょう。やや奥行きの足りない、薄っぺらい響きとタッチとなります。表現としては(このボックスに数曲収録される)協奏曲同様、豪快で明るい雰囲気がたっぷり。中島皇恵さんの音源が、この87枚組入手の要諦だったんです。5:01。

 ピアノ協奏曲 変ホ長調 WoO.4は、Beethoven 13歳の作品であって、ネットでは管弦楽部分を加筆した音源が数種発見できます(この録音が原典版なのかどうかは不明/少なくとも聴いていて不満を感じさせない)。エヴァ・アンダーは初耳ピアニストだけれど、バックには著名なる研究者であるペーター・ギュルケが控えます。全25分を越える立派な、想像以上に”聴かせる”作品でした。

 平穏で健全な第1楽章「アレグロ」は、Haydnより初期Mozart の愉悦を連想させます。もちろん、後年の圧倒的ラッシュは未だ姿を見せません。第2楽章「ラルゲット」も可憐で素直な旋律が(充分)美しいもの。中間部ちょっとした”翳り”も姿を現します。第3楽章「アレグレット」の主題は、シンプルで一度聴いたら忘れられない躍動があって、やはり我らがヴォルフガングの世界が木霊します。ここの”暗転”もお見事。ピアノ、オーケストラとも少年の繊細な味わいを生かした丁寧な演奏ぶり。

 全体としてやや陰影にも、迫力にも乏しい感じはあるけれど、他の著名なる協奏曲に負けない青春の魅力がありました。演奏機会を増やしていただきたいものです。

(2009年6月26日)

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written by wabisuke hayashi