Beethoven 交響曲第5番ハ短調/第6番ヘ長調「田園」
(セルジウ・チェリビダッケ/スペイン放送交響楽団1970年ライヴ)


Sergiu Celibidache (1912-1996) Beethoven

交響曲第5番ハ短調
交響曲第6番ヘ長調「田園」

セルジウ・チェリビダッケ/スペイン放送交響楽団

1970年マドリード・ライヴ放送録音。ネットより入手音源

 毎週末、愚にも付かぬド・シロウトのコメントを更新しているのは、音楽を愛するものとしてのケジメのつもり。こども時代〜若いころは貧しくてLPCDは高価、一生懸命FM放送をエア・チェックしたり(懐かしいカセット・テープで)廉価盤を探して謙虚に熱心に聴いておりましたよ。やがて幾星霜、華麗なる加齢を重ねて似非金満中年に至ってCD価格暴落、挙句データで音楽を聴くようになって・・・という話題は【♪ KechiKechi Classics ♪】に千度掲載しました。毎日飽きもせず、好きなだけ音楽を聴けるようになって、渇望感もありがたみも失いつつあります。謙虚な姿勢を忘れてはいけない・・・

 じつはズラリ並んだ音源から、嗚呼これを聴いてちょっぴりコメントしましょう・・・音楽が鳴り出したら残念、全然オモロない。そんなことが2件連続・・・挙句、こんな怪しい音源に行き当たりました。Sergiu Celibidache (1912-1996)の珍しい録音、ベルリン・フィルと上手く行かずカラヤン時代に至って不遇をかこったらしいのは、1950年台には伊太利亜のオケ、このスペインのオケ、あまり世評の高くないオケを指揮していたことからも想像できます。録音嫌いであり、ドラ息子の英断によって晩年のライヴ音源が大量に出現したのはありがたいこと。1970年のライヴは「もしかして戦中戦前の良心的録音?」と訝るくらい曇った音質でした。ふだん、わざわざそんな太古録音(でもないけど)聴くような趣味ありまへんで。

 これがなかなか凄い。音質耐え忍んで虚心に聴けば、スペインのオケとは俄に信じがたいほど鳴りきって集中したアンサンブル、きっとバリバリ鍛えたんやろなぁ、リハーサルで。最晩年の微速前進をイメージするとフツウの常識的テンポでした。交響曲第5番ハ短調交響曲第1楽章「Allegro con brio 」に提示部繰り返しなし(ちなみに終楽章も)颯爽とカッコよく、リズムに乗って徐々に熱を帯びていく盛り上げの上手さ。第4楽章 「Allegro - Presto 」に至ってたっぷり弓を引き絞って(タメの作り方が絶妙)一気呵成に疾走して「喝!」の掛け声も勇ましいチェリ節満開!フィナーレに向けてテンポ・アップの熱いこと。オケの技量云々をまったく感じさせぬ完成度也。

 音が終わらぬうちに万雷の喝采!それは某極東亜細亜のコンサートにありがちな(会場の空気すべてを台無しにする)「フライング・ブラーヴォ」に非ず、興奮に我慢しきれない感興がしっかり伝わります。

 交響曲第6番ヘ長調「田園」第1楽章「Allegro ma non troppo(田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め)」は晩年のチェリを予感させるゆったりテンポ、悠々朗々として雄弁であります。数日前、現役代表選手グスターボ・ドゥダメル(2014年ライヴ音源)を聴いてかなりガッカリ、名曲「田園」はあまりに著名であるが故にいっそう難曲なのは御存知の通り。こちら表情テンポの変化、明晰なリズム感、細部ニュアンスに説得力有、音質を乗り越えて細部仕上げの入念さに感心いたしました。デリケートな第2楽章「Andante molto mosso(小川のほとりの情景)」も同様、旋律の歌は雄弁にゆったり揺れ、自信に溢れて説得力が凄い。テンポはやや遅め?もうすっかり慣れました。木管が歌い交わす鳥の声に陶酔して、細部聴き馴染んだ名曲に久々の感銘しっかり有。この楽章、終わってしまうのが名残惜しいほど。

 第3楽章「Allegro(田舎の人々の楽しい集い)」〜第4楽章「Allegro(雨、嵐)」。ここもしっかり地に脚に付けた急がぬテンポ、リズムをしっかり刻みます。各パートへの指示も明晰、例えばオーボエやホルンの音色も魅力的と云うわけでもないけれど、しっかり曖昧さなく存在感を主張します。(ライヴならではのミスタッチなんのその)祭りからじょじょに雲行きが怪しくなっていくところでテンポ・アップ。「喝!」の掛け声とともに第4楽章は颯爽と快速です。テンションはマックスへ。低弦の動きが全体を支える構造がわかりやすい演奏でしょう。

 第5楽章「Allegretto(牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち)」。ここでぐっとテンポを落として、感謝の念いっぱい静謐に歌います。テンポは自然な呼吸を以って変化しつつ説得力充分。興が乗るとともに徐々にテンポが上がるんです。アンサンブルは優秀やなぁ、チェリビダッケはどの音も流させぬ決意に充ちて入念に味付け色付け、ラストの熱気にダメ押し「喝!」も入って燃える「田園」の締めくくりであります。(音質除けば)最高、これも聴衆の歓声は熱狂的。

(2016年10月16日)

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written by wabisuke hayashi