Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」/ 第8番ヘ長調(ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団)
Beethoven
交響曲第3番 変ホ長調「英雄」(1957年)
交響曲第8番ヘ長調(1961年)
ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
SONY SICC-20100
浪漫派の幕開けを告げる大交響曲「英雄」は幾度聴いて飽きぬ傑作中の傑作、Beeやんの交響曲を聴くならこれですよ。これがGeorge Szell(1897ー1970洪牙利→亜米利加)Beehoven交響曲一番最初のステレオ録音、自分が入手した音源は特別な高品質に非ずフツウ、それでもそれなりの鮮度を感じました。10年を経ての再聴。
どこかのカスタマーボイスに「ほとんど存在理由のない全集・・・古典美などどこを探してもなく、ただ現代機能主義的響きがあるだけ。心をどこかへ置き忘れた」〜そんなボロカスなコメント発見。人の嗜好はそれぞれ、世間揃って100%絶賛! というものこそ怪しい。現代機能主義的響きとは言い得て妙、心とはいったいなんのか?なかなか難物でっせ。自分はジョージ・セルを聴くたび、これが正しい!確信に至ります。
交響曲第3番 変ホ長調「英雄」
第1楽章「Allegro con brio」冒頭2回和音からぴたりとアンサンブルが合って、清々しいほどの集中力、これは全編に渡って維持され、基本中庸なイン・テンポに適性を感じさせるもの。素晴らしい緊張感とテンションの高さ。提示部繰り返しなしは残念。(14:49)
第2楽章「Marcia funebre: Adagio assai(葬送行進曲)」10年ほど前はここが苦手でした。必要以上に詠嘆や重みを加えぬ端正な表現はあくまでクリア。オーケストラの力強さとキレ味、確信を持った集中力アクセントに驚かされます。(15:38)
第3楽章「Scherzo: Allegro vivace」は清々しいほどのみごとなアンサンブル、颯爽と疾走するスケルツォ。ホルンの響きは快感です。(5:35)
第4楽章「Finale: Allegro molto」終楽章の変奏曲も圧巻のテンションに細部緻密な描き込みに、いっさいの曖昧さはありません。その表情の変化、テンポを落としてたっぷり清潔に歌う場面に「心」を感じ取れない方はきっと不幸なのでしょう。そしてダメ押しごりごりのアツい力感に納得。ぶりぶりと響き渡るホルンがまた、ものすごい威力でした。(11:33)
名曲にはいろいろと録音はあるけれど、おそらくヴェリ・ベストの演奏と確信いたしました。
あちこち革新的な仕掛けを施した交響曲第8番ヘ長調も傑作!
第1楽章「Allegro vivace e con brio」いきなりの弦による主題提示は高らかなテンションに始まり、第2主題は優雅なワルツ、その対比、鮮やかなリズムのキレ味、弦の清潔なフレージングを久々に堪能いたしました。(9:43)
第2楽章「Allegretto scherzando」木管のシンプルなリズムの刻みがメトロノームを連想させて、実質スケルツォ?ここってBeeやんの思いっきり前衛的な試みだと思うけれど、専門家筋はHaydn 交響曲第101番ヘ長調「時計」第2楽章「Andante」からの影響を指摘しているそう。なるほどねぇ、こちら颯爽とカッコ良いけど。ここの集中力も壮絶。(3:48)
第3楽章「Tempo di Menuetto」久々のメヌエット復活。中庸のテンポに思いっきりメリハリつけて、トランペット+ティンパニが印象的に雄弁。トリオのホルンとオーボエも絶品。(5:30)
第4楽章「Allegro vivace」そっと呟くように剽軽に始まる終楽章も適正なテンポ、やがて全オーケストラが爆発して小気味よいリズムを刻んでノリノリ。これほど正確なアンサンブルには滅多に出会えない。ここもティンパニが際立って存在感がありました。(7:52)
音質はこちらのほうがよろしいみたい。 (2025年11月22日)
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Beethoven
交響曲第3番 変ホ長調「英雄」
Mozart
ピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503
レオン・フライシャー(p)/ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
1957年録音 パブリック・ドメイン音源をネットより入手(おそらく.mp3)写真はSICC-20100
2014年3月、インフルエンザB型に罹患、朦朧とした意識の中、頭痛耳鳴りも酷く、数日間寝たきり、苦しみました。快復期に音楽を聴けるようになっても、心身ともに未だ本調子に非ず、どうしても昔馴染み、安易に自分の中に評価の定まったもの(作品演奏)になりがち・・・これは我が自主CD作成中、最初期のものであり、現在ならもっと良好なネット音源もあることでしょう。年代を勘案したら驚異的、少なくとも現役水準(サウンドの肌理は粗い)、オリジナルだったらさぞや・・・といった立派なものでしょう。
歴史的音源やら、1960年代初頭評価の定まった(?)音源も自由自在、いつでも無料拝聴可能な時代となりました。十数年前”市井のサラリーマンに廉価盤を!”大仰に叫んで【♪ KechiKechi Classics ♪】を立ち上げた意味も雲散霧消いたしました。シューリヒト、クリュイタンス、カラヤンもセルも、ワルターもクレンペラーもBeeやん全集だったら、もう実質上タダですもんね。有り難い時代に至って、なんや有り難みも、聴き手の根性も薄れたような・・・閑話休題(それはさておき)
ジョージ・セル入魂の2つの和音から第1楽章「Allegro con brio」始まりました。アンチ古楽器な方は、ここの力感不足を嘆くのですね。自分はやんわり軽妙な開始でも全然かまわぬけれど、たしかに2つの和音はぴたり! 息が合って凄い集中力、切れ味にて開始。シンプルなチェロによる第1主題提示から颯爽として速めのテンポ、サウンドは明るく、引き締まってスリム、重苦しさ皆無のアツいダッシュとノリであります。使用楽器とか楽譜さておき(こちらド・シロウトは要らぬ言及不可)センスはモダーンそのものであって半世紀以上前の”古臭さ/時代遅れ感覚”皆無、時に大胆なテンポの揺れも充分効果的、金管の思わぬ大爆発!木管のニュアンスにあふれたアンサンブル、縦線のリズムの合い方は尋常な水準に非ず。
個々のパートの個性が突出しないから一聴”滅茶苦茶上手い!”ように聞こえぬけれど、じつは滅茶苦茶上手いオーケストラ。贅肉のない、血色よろしいバランス体型であります。提示部繰り返しなしは残念、でも聴き手はこの緊張感(の繰り返し)に疲れてしまわぬか・・・そんな配慮かも。
第2楽章「葬送行進曲(Adagio assai)」〜多くの人々に愛される楽章であり、先日もネットにてダニエル・バレンボイムのスカラ座”クラウディオ・アバド”追悼演奏音源を聴いたばかり。この楽章を苦手としていて、できれば淡々と〜それこそ古楽器系演奏風軽快サウンド表現が望ましい〜ここでのバランスも特筆ものであり、詠嘆に歌いすぎず、情感ニュアンスに不足せず、引き締まったサウンドは中庸なテンポを維持して粛々と進みます。これ以上のドラマを望まれる方は、オーケストラの素直な響きも含め不満があるかも知れません。なんせ一定の年齢以上はフルトヴェングラー刷り込みですから。
第3楽章 「Scherzo(Allegro vivace)」。快速テンポ+肌理の細かいニュアンスを以って、肩の力が抜けた流麗な演奏。トリオのホルンは上手いもんっすよ。いえいえ、どのパートも文句ないのだけれど。第4楽章「 Finale(Allegro molto)」ここは作曲者お気に入り、あちこちの作品に引用される著名な主題が、自在に変容される天才のワザ。ここも速めのテンポ、筋肉質に躍動するリズム感であります。Beeやんって変奏曲の天才っすよ、フクザツな音楽を愉しく、わかりやすく聴かせるといった意味に於いて(変奏曲のみ)Mozart より上かも。ジョージ・セルのテンションの上げ方、緊張感の維持、抜き方、縦線の合わせ方は尋常なる水準に非ず。ラスト迄、たっぷり細部迄愉しませて下さって・・・疲れ果てました。
ジョージ・セルはいつも正しい。正しいBeethoven 。いつもと同じ結論也。但し、病明け途上のせいか?ラスト迄集中すると少々音質の不備が耳に付きました。高音質CD入手さておき、少なくともうちょっとマシな(.flac)音源見つけて再度自主CD化しようかな?レオン・フライシャーのMozart はある意味、もっと輝かしい、天使のような世界なんだけど、コメントする体力尽きました。 |