Beethoven 交響曲第2番ニ長調/第3番 変ホ長調「英雄」
(ハインリヒ・シフ/ドイツ・カンマーフィル)


BC12512 Beethoven

交響曲第2番ニ長調
交響曲第3番 変ホ長調「英雄」

ハインリヒ・シフ/ドイツ・カンマーフィル(ブレーメン)

Berlin Classics BC12512 1994年録音

一時話題になった”過激”演奏であり、既に話題にならなくなった演奏?(世評など、どーでもよろしいが)小編成、引き締まったリズムと疾走感、こんなパターンは21世紀に日常茶飯な存在となりました。悪くはないが、素っ気ない、響き痩せ過ぎ、ラスト迄?状態だったのは聴き手の風邪症状の問題か。今更旧世代スタイル(ましてや戦前太古巨匠時代)に戻る気はないが・・・(音楽日誌2011年4月)

  ブレーメン本拠、1980年に学生中心に創立されたとのことだから、当時の若者もすっかりヴェテランになったことでしょう。このオーケストラは10年以上前から注目しておりました。スピード感と切れ味ある技巧がウリか。現在の音楽監督はパーヴォ・ヤルヴィ、Beethoven 録音しておりますね。

”怒濤の攻撃性溢れる特攻隊的演奏・・・燃えるような情熱とスピード、ノリ、舌を巻くほど完璧なアンサンブル” これが当時の感想であって、久々の拝聴も基本印象変わらず。アーノンクールの全集が1990年ライヴでしたっけ(未だ拝聴機会を得ない)、ジョン・エリオット・ガーディナーの全集が1991-1994年、そしてデイヴィッド・ジンマンが1997-1998年、それ以降は怒涛の如く新時代演奏が出現して、その一連の流れに位置する演奏か。そうか、それ以来”歴史的録音はちょっとキツいなぁ”(音質的にも演奏スタイル的にも)と感じるようになったっけ。スポーティな躍動を堪能しつつ、あちこち寄り道した聴き手は”オーケストラのサウンドにもう少々色気があっても・・・贅沢なるコメントを付けたくなりました。音質問題もあるのか。(音楽日誌2013年10月)

 Heinrich Schiff(1951ー2016)は2008年脳卒中を発症(Wikiによる)とあって詳細わからないけれど、65歳逝去はあまりに早すぎるもの。もともとチェリストとして高名、1990年より指揮活動を始めたらしく、ワタシはネットよりヴィンタートゥーア・コレギウム・ムジクムとの録音をいくつか拝聴しておりました。上記にもコメントがあるように、ドイツ・カンマーフィルのBeethovenと云えば(今や旬の)パーヴォ・ヤルヴィが話題、こちら2枚分のCDは忘れ去られ実質上NMLにて聴くしかない状態でしょう。他に交響曲第1番ハ長調/ 第4番 変ロ長調の1992年録音が存在します。5番以降も録音してほしかった!売れんかったんやろなぁ、きっと。

 ちょいと遅れてしまったけれど、2017年年の瀬にハインリヒ・シフを追悼いたしましょう。第2番ニ長調交響曲は1802年Beeやん32歳の作、第1楽章「Adagio moltoーAllegro con brio」に序奏があるのは師匠筋にあたるHaydn風だけど、既に新時代の大きな意欲が聴き取れます。出足は軽い響き、提示部に入ると疾走と躍動が既に彼の個性満開!(もちろん提示部繰り返し有)切れ味たっぷり、ティパニの躍動がやたらと目立つやや”薄い”響きであります。「怒濤の攻撃性溢れる特攻隊的演奏」とは初耳印象、その通りの快速躍動はやや力みを感じさせ、最終盤の金管は爽快。アンサンブルはピタリと揃って上手いオーケストラでしょう。直接音中心、残響控え目な音質はオーケストラの個性に似合っていると思います。

 第2楽章「Larghetto」ここは屈指の優しくも暖かい旋律を誇る緩徐楽章。清潔几帳面なリズムを刻んで、古楽器にかなり馴染んだ耳にも弦は少々薄く、潤いが足りんと感じます。この辺り、世間では”骨と皮ばかり”と云われそう。第3楽章「Scherzo」はBeeやんがMenuettに替えて初めて”Scherzo”と名乗ったところ(第1番も実質上そうだったけれど)以降、交響曲の規範となったのは皆様御存知の通り。サウンドの切れ味はバランスよろしく躍動いたします。意外とオーソドックス、テンポも速くはない。

 第4楽章「Allegro molto」は剽軽に躍動する若々しい楽章。ここも清潔几帳面なリズム、細かいパッセージもていねいなアンサンブル、最終盤はアツい、みごとな疾走でしょう。全体としてやや窮屈な感じかな?愉悦が足らんのか。

 「英雄」交響曲は古今東西名演犇めく名曲中の偉大なる名曲。編成の小さなオーケストラはどう料理するでしょうか。第1楽章「Allegro con brio」。冒頭に2回和音ぶちかましの力感に不足はなく、例の如しティパニがカッコ良く躍動します。快速!フレージングはさっぱりとして重量感やら落ち着きはないけれど、エエ感じヴィヴィッドな出足であります。もちろん提示部繰り返し有、こうでなくっちゃ。ホルンは素直な響き(ちょいと面白みがない)前曲より弦が増えているかも。コーダのトランペットは脱落してるみたい(違ったらご指摘下さい)。

 第2楽章 「Marcia funebre(葬送行進曲)Adagio assai」ここも著名なところ。この楽章を好ましく聴けるようになったのは華麗なる加齢を重ねてから、というか、緩徐楽章一般にそんな嗜好に変わりました。「ダダダ・ダン」(まるで「運命の動機」)が全編を支配して、予想通りあまり深刻にならず、軽快に淡々、さっぱり風情の”葬送行進曲”であります。フーガの緊張感、クライマックスの迫力はなかなかのもの。やはりキモはティンパニの存在感であります。LP時代、この楽章途中で盤面をひっくり返したもの・・・そんな(しょうもない)記憶が蘇りました。

 第3楽章 「Scherzo: Allegro vivace」は蒸気機関車の疾走!そんな重量感をかつて感じたもの。ここも快速な微弱音にて開始、ティンパニのカッコ良い一撃に爆発いたしました。リズムは几帳面に正確、トリオ(中間部)のホルン重奏は上手すぎて?オモロない感じ。(最終楽章にはアタッカにて突入して欲しい!)第4楽章 「Finale: Allegro molto」ここはBeeやんがあちこち使っている主題の変奏曲也。創作主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 作品35(通称「エロイカ」変奏曲)も大好きですよ。速めのテンポ+「ダ・ダ・ダ」三連音の迫力たっぷり、重々しく物々しくもない、思わせぶりでもない軽快な流れが快いもの。やや四角四面に落ち着きはないけど、変容しつつ疾走する変奏曲はカッコ良いですよ。

 いろいろケチ付けたホルンは最終盤、朗々と存在感を主張します。上手いもんでっせ。この辺りになると弦が(管に比べて)響きがうすい、なと。ラスト圧巻のテンポ・アップに爽快なラストを迎えました。最後までティンパニのカッコ良さが際立ちました。

(2017年12月31日)

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written by wabisuke hayashi