Beethoven ピアノ協奏曲第3番ハ短調
(ハンゼン(p)/ケルテス/バンベルク交響楽団)


Beethoven  ピアノ協奏曲第3番ハ短調(ハンゼン(p)/ケルテス/バンベルク交響楽団) Beethoven

ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37

コンラート・ハンゼン(p)/イシュトヴァン・ケルテス/バンベルク交響楽団

ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 作品7

アルフレッド・ブレンデル(p)

CONCERTOROYALE 206209-360 録音年不明(1960年頃)  3枚組525円(税込)で購入したウチの一枚

 余計な蘊蓄から。VOX系音源を多く流用する(ライセンス関係が少々怪しい)CONCERTOROYALEだけれど、交響曲も含め1960年頃のイシュトヴァン・ケルテスの音源は珍しく、貴重だと思います。これもVOX音源なのかな?(ブレンデルの最初のピアノ・ソナタ録音は間違いなし)

コンラート・ハンゼン(1906-2002)は往年のドイツのピアニストで、フルトヴェングラーとの録音(第4番1943年)で知られております(未聴)。VOX系音源で一番心配すべき音質はまぁまぁで、日常聴きに問題ない水準。

ケルテスのバックは配慮ある立派なもの(やや弦がヒステリックで薄いが)。ハンゼンのピアノは、まったくのオーソドックス系〜淡々とリキみなく、リリカルに美しくも抑制されたタッチで音楽は進んでいきました。エキセントリックな表現皆無で、しっとり中低音に厚みのある瑞々しいタッチが魅力であります。粛々と音楽は進んで、やがて(知らぬうちに)大きな感動に包まれます。白眉は第2楽章ラルゴの包み込むような暖かさか。(この楽章はケルテスの繊細なる歌心も絶賛されるべき価値有)終楽章にも含羞の味わい有。ほとんどトツトツと語っているような表現でした。 (「音楽日誌2006年4月」より)

 Mozart に比して、Beethoven のピアノ協奏曲を聴く機会はずいぶんと少ない・・・先人達の名作に対する敬意は失わないつもりだけれど、苦手意識は拭えません。それでも”安ければ買ってみる”、そして”ちゃんと聴いてみる”という姿勢は基本だと思います。このハ短調協奏曲は1800年の作品、Mozart ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491(1786年)の冒頭によく似ている(調性も同じ)と思いませんか。ま、ずっと強面だけれど。

 しかし、演奏そのものは”強面”ではなく、ものものしい緊迫感を前面に出したものではありません。ハンゼンは巨匠世代の人だけれど、スタイルとしては軽快で、”淡々とリキみなく、リリカルに美しくも抑制されたタッチ”・・・上記には「オーソドックス系」と評しているが、モダーンで”激演!”とか”火花散るようなっ!”的方向ではないということです。第2楽章「ラルゴ」の淡々として、いつしか豊かな歌に包まれる辺りが一番の聴き物でしょう。瑞々しいピアノですね。バンベルク交響楽団の弦も快調です。

 それこそ”強面”に表現すること可能なる第3楽章「ロンド・アレグロ」だけれど、”含羞の味わい”、”ほとんどトツトツと語っている”という最初の印象は崩れません。表現としてはMozart でして、叩き付けるような強靱なる打鍵!とは無縁な、微笑みを常に湛えた演奏です。30歳そこそこと類推されるケルテスも軽快で、センス良き合わせぶりでした。このオケは地味な印象だけれど、指揮者によってかなりやる気を見せるんです。

 余談だけれど、こんな拙文ひとつでも数回の繰り返し聴取が必要でして、作品的に苦手だと耐えられないもの。これだったら大丈夫。音質は並のやや下だけれど、VOX系音源(かどうか自信ないが)はおおよそこんなものでしょう。

 ”苦手だ”と避けてばかりいると、新しい音楽の悦びを発見できない・・・Beethoven のピアノ・ソナタも聴く機会はあまり多くはありません。なんどか聴いたはずなのに、初期作品である第4番 変ホ長調は”初めて聴いたかのように”新鮮でした。(いままで真面目に聴いていなかっただけだ)

 溌剌として前向き、若々しい第1楽章「アレグロ」、端正で陰りのない第2楽章「ラルゴ」・・・この辺りまでは、青春時代のBeethoven も悪くないな、といった感想でしたね。第3楽章のメヌエットは、優雅で、夢見るような旋律が陰影深い。ああ、Beethoven って天才なのだね。終楽章「ロンド」の晴れやかな下降音形が躊躇いがちであって、後年よく見られる”終楽章/大躍進/大爆発!”とは異なるんです。Mozart が香ります。

 三度全集を完成させているブレンデルだけれど、これは30歳頃の録音。音質ともかくとして、既に中庸なバランスを感じさせるスタイルは完成されておりました。特別な美音ではないが、細部迄配慮の行き届いた、ていねいな表現です。 

(2007年7月6日)

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