Beethoven ディアベルリの主題による33の変奏曲/
エロイカ変奏曲(マリア・ユーディナ(p))
Beethoven
ディアベルリの主題による変奏曲 作品120
オリジナルの主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 作品35「エロイカ変奏曲」
マリア・ユーディナ(p)
RUSSIANDISC RC CD 15010 1961年録音 購入価格失念
マリア・ユーディナ(1899〜1970)は旧ソヴィエットのピアニスト、ユダヤ系しかも現代物を多く演奏したり、物怖じしない言動で当局から睨まれたがスターリンが彼女のファンであった、ということで生き残った、との聞きかじり情報です。国外に出なかったしメジャー・レーベルに録音がなかったから知名度は低いかも。このCDは個人輸入(たいてい十数枚まとめて!)したものに含まれていた、と記憶「音質あまりぱっとせんな」と棚中に放置プレイ十数年((p)1994)、久々に発掘したもの。
ワタシは変奏曲大好きです。だって冒頭の主題だけ認識しておけば、あとはシロウトにもわかりやすいから。Beeやん苦手なワタシだけれど、先人の遺した偉業は一通り揃えておくのは、市井の音楽愛好家としての最低限の矜持であります。「ディアベルリ変奏曲」はこれ一枚して持っていない(数日後にもう一枚届くが)。たいへんな名曲であります。Bach 「ゴールドベルク変奏曲」が変奏曲界に於ける旧約聖書なら、こちら新約聖書(これを剽窃、ありきたりのオモロないネタと呼ぶ)。
久々に聴取すると音質はさほどに気になるほど、音楽を愉しむのに不足はない。「ディアベルリ」全44分、トラック一発!一度聴き出したら最後まで集中せい、的収録であります。これがなんの苦痛もない、一気にラストまで進みます。ピアノの音粒が洗練され、テクニックが安定していること、表現が変化に富んで繊細、大叩きして響きが濁るようなこともない、流れは無理なくスムースであります。ゆったりとしたところの詠嘆はさらりとして、クサくならない。これは強面のBeeやんじゃないんです。かっちりとした楷書ではなく、抑制のある行書か。
作品120だから最晩年でしょ。若い頃の激しい闘争ではなく、それこそ堅牢な構成がBach を感じさせる名曲。これ以外、少なくともここ最近、他の演奏で聴いたことはない作品(LP時代は誰のを持っていたっけ?)だから、なんとも言えんが、こんな静謐荘厳な作風を痛感させて下さるのは希有な経験かも。ラスト第33番変奏は、そっと名残惜しく消えていくんですね。
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「エロイカ変奏曲」は(珍しく)お気に入りでして、LP時代からお気に入りでした。な演奏を堪能しておりました。これも馴染みの主題だから、初耳でもちゃんと愉しめる21分。このサイト初期にもちゃんと更新があります。
これがこの作品イメージとはずいぶん姿が違う。叩かない、叫ばない、粛々と軽妙につぶやくような演奏であって、熟達した表現は雄弁ではない。主題が「エロイカ」だから勇壮強靱に表現するものだ、と思っていたけれど、流れを重視して細部裏地に凝るような(一見)淡々としたもの。大仰な動きやら、思わせぶりな”シナ”一切なし。テクニックのキレは圧巻です。タッチは無機的にならず、上質な仕上げに満足できる演奏。
名演。この作品でも”抑制された詠嘆”が光りました。 (2009年2月20日)
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<追加>上記更新より2ヶ月後
Beethoven ディアベルリの主題による33の変奏曲 作品120〜コンスタンティン・シェルバコフ(p)(NAXOS原盤)・・・マリア・ユーディナ盤は速めのテンポ、アツい推進力演奏(しかもニュアンスが変幻自在)だった、と比較して気付くのも音楽の愉しみ方也。44分(トラック分けなし)に対し、シェルバコフは56:30全33のトラックに分かれます。機能的には後者のほうが便利だけれど、ユーディナ盤”一気全曲聴き強要”は、音楽聴取の姿勢として正しい。閑話休題(それはさておき)シェルバコフ盤は(当然、もちろん)音質極上だし、冒頭ディアベルリの主題は生真面目かつ牧歌的に演奏されます。
各変奏の表情付けは厳格で、細部まできっちり立派に仕上げないと!といった神経質が個性であります。やはりユーディナ盤とは別作品を聴く思い。少々肩がこる感もあるし、スムースな流れや推進力はもっと欲しい・・・ (2009年4月14日追加)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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