Beethoven 交響曲第9番ニ短調
作品125「合唱」(マルケヴィッチ)
Beethoven
交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱」
マルケヴィッチ/コンセール・ラムルー/カールスルーエ・オラトリオ合唱団
(LP→DAT→MDへ 1961年録音)
「ベーレンライター版による演奏かどうか知らんが、その系統の元祖のような演奏。(追加情報。マルケヴィッチ改訂版だそう)つまりメリハリ(なんてもんじゃない、叩きつけるよう)があって、速めのテンポで推進力が尋常ではない。オーケストラはBeeやんと縁が薄そうだけれど、カルめの響きながらアンサンブルの水準はきわめて高く、最後までテンションが持続します。たしか全集録音していたはずで、一部CD復活が始まっているが、なんとか全部出てほしいもの。隠れ名演。」
〜これはかつて自分で付けたコメントだけれど、「全集を録音していた」というのは間違いで、第3、5、8、9番しか存在しません。PHCP-20411でCD化されました。マルケヴィッチ改訂版による「合唱」に堤俊作盤がある(シティ・フィル、1990L、ファンハウス)とのこと。でも無楽音盲の徒なので、どこがどうやらはサッパリわからない。
ま、そんな蘊蓄抜きにして、年末だし「第九」を聴いて一年を振り返る〜これが正しい日本人のありかたです。異議なし。で、ある日通勤でたまたまこのMDつかんでバスに乗りました。いやはや、立派な演奏ですねぇ、コレ。驚き。
まず、明快!ワタシはこの作品、第1楽章〜3楽章が文句なしの名曲と思うけど、スッパリした切り口で、ハズむようでもある。カルくはないが、鈍く引きずるような重さは微塵も存在しない。時にね、「安易に音が出過ぎる」なんていう演奏ありますよね。そういうのとは縁がなくて一見クールだけれど、勢いが素晴らしい。
フランスのオーケストラでしょ?管楽器に重量感がなくて、やたらと「ぱんぱか」鳴っているようで、ま、散々こどもの頃から聴いた曲なのに、耳慣れぬ音があちこちから聞こえます。(これ特に第2楽章の印象)
第3楽章の息の長い変奏曲〜素敵ですね。これほどもたれず、流れの良い演奏も久しく聴かなかったような気もしますね。「ラムルーの弦は超一流」なんて評価も聞いたことはないが、よくもまぁ、というくらいしっとりと味わい深いアンサンブルに仕上がっていて、マルケヴィッチの実力に感心します。
おお、例の(難しそうな)ホルン・ソロの軽やかな音色!ほのかなヴィヴラート。これぞ妙技。高まる期待。気分高陽。そして大問題の最終楽章へ。
これねぇ、どうも雑然と寄せ集めっぽい前半部分で、統一感がない。冒頭のなんやら追い込まれたような悲壮なオーケストラ全奏〜「歓びの歌」(弦の静かな)登場までが、どうもおかしい。ツマらない。無理矢理という感じ。
「歓びの歌」変奏曲は素晴らしいですね。低弦から静かに旋律を積み重ねて、ファゴットが絡む辺り「嗚呼、今年もいっぱいチョンボしたな」なんていう感慨もシミジミ。〜それを打ち破るようにまた不躾な全奏〜音域が中途半端だというバリトン・ソロへ。
テンポ設定、アンサンブルいずれもカッチリしていて快感があります。けじめがあるというか、曖昧さがないんです。ティンパニのリズムが決まっていて気持ちヨロシ。緊張感が崩れない。特別に「もの凄く艶やかなオーケストラ」っていう訳じゃないが、存分に美しくて文句なし。
合唱の評価はわからないんですよ。(ピッチが正確か、響きに厚みがあるか?)昨年聴いた記憶では「声楽が弱い」といった印象もあったが、こうしてみるとそんなことはない。ちゃんとした充実した「人の声」を感じます。マルケヴィッチは最後までクールですね。いくらでも煽ってテンポを上げたりすることは可能な部分でも、端正なる姿勢を崩さない。細部のパートまでほんまに良く聞こえる(ような気がする)。
ティンパニがやたらと活躍するんですよ。クールではあるが、冷たかったり素っ気なくもない、爽やかな気持ちになる演奏でしょうか。これが40年以上前に録音されていたことに驚くばかり。音も意外と良好。(2002年12月2日)
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