Beethoven 交響曲第6番ヘ長調「田園」/第8番
(ザンデルリンク/フィルハーモニア管弦楽団)


Beethoven  交響曲第6番ヘ長調「田園」/第8番(ザンデルリンク/フィルハーモニア管弦楽団) Beethoven

交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
交響曲第8番ヘ長調 作品93

ザンデルリンク/フィルハーモニア管弦楽団

D CLASSICS HR704632/BX704672 1981年録音 5枚組2,750円で購入したウチの一枚

 ザンデルリンクの全集を購入したのが1998年。不遜なる音楽愛好家であるワタシは「ん?田園。も〜、カンベンしてよ」的安易かつ粗暴なる先入観に囚われ、しかもザンデルリンクの定評ある録音(例えばSibelius 、Shostakovich、Mahler も少々・・・)がどうしても好きになれず、最近敬遠しておりました。でも、Bruckner 交響曲第3番ニ短調(1963年 0002342CCC)を聴いて、これはほんまに立派な演奏だな、と思いも新たに。じゃ、もう7年ぶりにBeethoven 聴いちゃおうか、と棚奥から取り出したのがこれ。

引きずるような後倒しのリズム。やがて聴き手が根負けして、まるで鈍行列車で田舎の景色を眺めているような音楽の流れに慣れて、ついにはフィルハーモニア管の美しい木管のソロを心待ちにする心境に至ります。嵐の場面は意外とド迫力さが決まっていて、終楽章の感謝の気持ちが染み入るばかり。/第8番は、ザンデルリンクのリズムの重さが良好な方向に向かったもので、重厚で迫力ある重戦車のような勢いを堪能させてくれます。3楽章における、しみじみとした牧歌的な歌の魅力。(特に弦)
との(かつての)感想だったが、意外や意外、どの旋律も説得力が深く「田園」に感動したのはここ数年久しいという驚くべき濃厚な味わい。「低音の腰がない、音に潤いを欠く、残響に深みがない。オフ・マイクというんでしょうか、遠くから頼りない音」と散々だった録音評価も、ジミで少々粗野な響きがけっして不快ではない・・・(「音楽日誌」より再掲分含む)

 生来の飽き性だけれど、これほど自らの評価がコロリと変わるのは珍しい。第1楽章提示部で繰り返しがないのは寂しいが、じっくり、ゆったり、噛みしめるような落ち着きこそ田園風景!という安定感有。これは聴き手の成熟(老化かも)か、それともオーディオ環境の変化故か。EMIにはありがちだけれど、音量収録レベルが低すぎるんです。中音域の豊かさや艶にに不足するが、そう悪い録音(たしかディジタル録音)ではない。低音をごりごり強調させない(のか、収録技術の問題か)のも印象を弱いものにしているが、良く聴けば奥行きに不足することはないし、サウンドのザラリ粒の粗さ(というか、艶々していないこと)はザンデルリンク確信的指示かも知れません。

 軽やかで素直、切れ味明るい「ザ・フィルハーモニア」を期待するとはぐらかされますね。ジミに霞んで、柔らかく抑制された響き。浮き立つ気分ではなく、疲れ果て、すべてを忘れ和んでいる第2楽章。テンポはゆったり動きは少ないが、安寧に充ちてシミジミ控えめに歌う各パートの妙技。これがこのオーケストラの柔軟性なんでしょう。クレンペラーでもバルビローリでも、マゼールでもない。旋律を煽らず、粛々と進む自然な流れ。これぞ「田園交響楽」か。(この楽章こそ白眉)

 第3楽章は、のんびりとしたテンポが素朴な村人の祭りを彷彿とさせます。リキみはどこにもないけれど、アクセントはしっかりとして大きなリズム感が全体を支配します。巧まざるユーモアさえ感じさせる愉悦感。ホルンが美しいですね。やがて嵐が・・・この山場のために今まで抑制を利かせていたのか、と思わせるスケールの大きさ〜それはたんに音量が大きい、ということだけではありません。金管を必要以上に鋭く響かせない、各パートの旋律を殺さないことが前提なんです。

 最終楽章は感謝に溢れ、静かな畏敬の念が広がりました。ここは朗々と歌いたくなるところだろうが、少々淡彩も過ぎるか、というくらい響きは抑え気味。終楽章に至ると少々音質の肌理の粗さが気になりました。田舎臭く、カッコよろしくないが、かつて聴いた中で最高評価をしたいくらい。

 第8番ヘ長調は「小味な交響曲」としてではなく、驚くべき勇壮なる構えで開始されました。テンポは中庸で適正、メリハリよく明快なリズム感で、しかも響きにカタさが見られない。重過ぎない。木管の透明感が「ザ・フィルハーモニア」ですね。哲学的な第2楽章には、ユーモラスなノリがあります。カラダの大きな男が細かいワザをこなしている風情有。ここでもしっかりとしたリズム感が維持されるんです。鼻歌で流すなんて想像も付かない。

 第3楽章はカラヤン以来のスケールですか?(あれほどレガートしないが)テンポ焦らず、走らず、状態。Haydnの剽軽にBrahms の風格をブレンド、みたいな感じか。中間部ホルンとオーボエの掛け合いも、ゆったり楽しいですね。終楽章は躍動感(軽快とは言えないが)があって、中庸なテンポであり、スケールは相変わらず大きい。そして無骨だけれど表情が明るい。

 Beethoven は録音状態にあまり印象左右されない音楽と思うが、両曲とも最終楽章に至ると響きの濁りが少々気になりました。これはワタシの集中力問題かも知れません。

(2005年3月25日)

 

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written by wabisuke hayashi