Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
(フランツ・コンヴィチュニー/シュターツカペレ・ドレスデン)


CCC 0002322CCC Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

フランツ・コンヴィチュニー/シュターツカペレ・ドレスデン(1955年録音)

合唱幻想曲ハ長調 作品80

ギュンター・コーツ(p)/コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団/ライプツィヒ放送合唱団(1960年録音)

CCC 0002322CCC 11枚組3

 強力な支持層を誇るコンヴィチュニー党。先に「田園」に対し疑問を呈したら、全日本コンヴィチュニー擁護同盟、「明るくコンヴィチュニーを語る会」、旧東ドイツ伝統的演奏普及連盟、等々から激しい抗議のメールが殺到!(するはず、ないじゃないですか)閑話休題、ワタシはどうも彼の演奏には入り込めませんでした。独自の政策(安いCDしか買わない)を貫くKechiKechi党は苦戦を強いられております。

 でも、edel CLASSICS(KechiKechi Classicsとは似ているようで、ずいぶんと違う)で、新しい11枚組が出たのでちゃんと買いましたよ。一枚目が、単発でCD化されたときも話題になったドレスデンとの「英雄」。嗚呼、これはもっとちゃんとBeeやんを聴け、との神の啓示と思いました。

 ここ最近、Beeやんアレルギーがますます悪化し、ちゃんと聴けていません。ジンマン、クリップス、シューリヒト、等できるだけ軽快で、スッキリ流れるような演奏しか聴けないし、フルトヴェングラーもトスカニーニも縁遠い今日この頃。音楽ファンの風上にも置けない状態が続いております。許して下さい。


 ゲヴァントハウスとの全集を一通り聴いた感想は、冷静、明快、地味、暗い、大人しい、音が足りない(?)、情熱不足、といったところ。オーケストラの個性は貴重だけれど、ワタシの好みではない。技術万能とは思わないが、メカニック的に少々気になるところもある。そうだなぁ、第7番くらいでしょうか、心の琴線に触れたのは(昔から聴いていたからか)。

 で、ドレスデンとの「英雄」〜これはなかなか魅力ある演奏ですね。なにが?ってオーケストラの響きですよ。深く、渋い。とくに鈍い光沢を放つシルクのような弦、これまた艶消しのような木管の奥ゆかしさ、ホルンを先頭に深く、金属的なうるささを感じない金管。中低音に重心のある骨太で、安定した味わい。はっきり言って、技術的にはゲヴァントハウスの相当上を行くと確信。

 表現的にはいつもの冷静、明快、地味、暗い、大人しい、といったスタイル。第1楽章冒頭の一発目ぶちかましから、音に奥行きがあって魅了されます。ワタシはオーケストラが持つ個性ある響きを、自然に活かす演奏には目がないほうなんです。(代表例;ハイティンク/コンセルヘボウ。クーベリック/バイエルン)「音が足りない」という印象はなくて、ま、古い録音ではあるが瑞々しいのは事実なんです。

 第1〜3楽章までは「うん、こんなもんでしょうか」と思っていたのに、終楽章で印象一変。燃えるような怒濤の演奏なんです。ははぁ、ここに至るためにワザと抑制していたんだなぁ、と読みました。もともとが豊かな響きのオーケストラだから、これに情熱が加われば百人力。速いテンポだけれど、興奮が上滑りしない。少々コンヴィチュニーを見直しました。(強大な勢力の攻勢に節を曲げたわけではない。ドレスデンのオーケストラに敬意を表して)


 「合唱幻想曲」は、以前に国内盤を1,000円で購入しておりました。意外なほど録音が少なくて、ピアノ協奏曲全集と並録されても良さそうなのに、そんなに出ておりません。実演では「第九」の前座に演奏される機会は多いはず。ギュンター・コーツってどんなピアニストかは知りません。

 自由な構成の幻想曲だけれど、ヴァイオリン協奏曲のピアノ版に味わいが似ていて、リリカルで美しい。合唱の、そっと歌い出すところも奥床しいし、可憐なピアノとの絡み合いも聴きものです。音の状態も悪くないステレオだけれど、ドレスデンとの音の違いはよくわかって面白い。(好きずき、です)18分弱、という長さも適度。


 ついでと言っちゃなんだけど、ゲヴァントハウス盤も聴きました。

Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

フランツ・コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1959年録音)

+レオノーレ序曲第1・2番

CCC 0002172CCC 11枚組

 この演奏も、立派であることを認めるのに吝かではない。まだまだ恣意的、そうでないものも含めて大仰な「巨匠時代」の録音であるにもかかわらず、明快。曖昧だったり、流したりするところのない、ひとつのお手本を示したような、価値ある演奏です。

 たとえばオーボエ、ファゴット、フルートの旋律受け渡しの音色も捨てがたい魅力。第1楽章はアンサンブルの縦線のズレが少々気になるが、スケルツォ楽章の推進力は素晴らしい。終楽章の解釈はドレスデン盤とほぼ同じで、ここは聴きどころです。燃えるような情熱。

 何が違うのか。弦です。弦が平面的で、音の濁りが気になります。美しくない。木管は美しいが、指揮者のすぐ前で演奏しているように聞こえました。これは録音の加減もあるのかもしれません。オーディオ的に上等ではないが、ちゃんと演奏者の個性が見える録音はあるものです。CD化するときに、ノイズとともに大切な響きのエッセンスを流してしまったのかも。(これ悪名高いNo Noise Systemでしたっけ?)

 結論。ドレスデン盤のほうがずっと聴き応えがある。ワタシの高級ならざるオーディオが原因で、真実の姿が見えないのかも。嗚呼、これでまた「大日本コンヴィチュニー・ファン倶楽部総連合会」からの抗議は覚悟しないと。(2001年9月14日)


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written by wabisuke hayashi