BBC PROMS THE CENTENARY 1895-1995


IMP MASTERS  DMCD98 写真は往年の英国名指揮者サー・マルコム・サージェント Berlioz 葬送と勝利の大交響曲 作品15より第3楽章「アポテオーズ」(Apotheose)
ジョン・プリッチャード/BBC交響楽団
(1983年)

Tchaikovsky バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71a
マルコム・サージェント/BBC交響楽団
(1966年)

Elgar 交響曲第1番 変イ長調 作品55
エイドリアン・ボウルト/BBC交響楽団
(1976年)

Gluck 歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」第1幕第2場より
”Che,disse,che ascolitai”〜アリア 「さらば、私の嘆きよ」(オルフェオ)
ジャネット・ベイカー(ms)/レイモンド・レパード/ロンドン・フィルハーモニー
(1982年)

Wagner 歌劇「タンホイザー」より、序曲とヴェーヌスベルクの音楽
トマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルハーモニー/BBC女声コーラス
(1954年)

R.Strauss 組曲「薔薇の騎士」作品59
ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団 
(1969年)

Janacek シンフォニエッタ
ルドルフ・ケンペ/BBC交響楽団 
(1974年)

YOUMANS(Shostakovich編) 二人でお茶を(タヒチ・トロット)
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団 
(1981年)

すべて「プロムス」/ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ。

IMP MASTERS DMCD98 2枚組 $3.98にて個人輸入

 このサイト最初期更新の文書であり、既に10年以上前に購入したCDだけれど、いずれワタシと出会う運命だったのでしょう。その後、中古屋にて800円ほどの値付けで(数度)並んでいるのを目撃いたしました。(これを放置するようでは、音楽ファンとして恥ずかしい・・・と挑発)いずれいろいろな年の「プロムス」ライヴだけれど、音質の良さと熱気が特徴の楽しい2枚組であります。

 ”再聴行為”というのは”一粒で二度おいしい”的、以前とはまったく変わった印象(味)を持つことがあるけれど、このCDに限ってほとんど付け加えることなし。祝祭的雰囲気と聴衆の熱気、たっぷり収録されてどれも最高なんです。音質もなかなか良好。そして収録が多彩で、盛り沢山。コンピレーション編集のお手本としたい2枚組。

 Berlioz 「葬送と勝利の大交響曲」は管楽器を中心にした巨大編成に、最後には合唱も入って、まさに祝祭的な作品であります。プリッチャードは1989年に亡くなった手堅い指揮者であって、たしか1970年、バルビローリの急逝を受けて代理で来日していたはず。ここでの演奏も、あわてず、余裕と抑制を以て全体が混沌とした響きにならぬようまとめておりました。聴衆の熱狂有。(以前の文書には「この楽章のみ演奏したのでしょう」などと要らぬことを書いているが、最終楽章だから全部演ったのかも)

 Tchaikovskyの「くるみ割り人形」は、作品旋律がいかにも”メルヘン!”ですね。サージェント亡くなる前年の演奏は、優雅で、しっとり雰囲気たっぷりのもの。上手いもんですよ、オーケストラも。上品だけれど時に溌剌リズムにアッチェランドも加わって、ラストがたっぷり甘い、ノリノリの「花のワルツ」でしょ。これが聴衆にバカ受け。録音も極上。

 CD壱枚目ラストは大物Elgarの交響曲第1番 変イ長調となります。

 この作品を十八番とした古老エイドリアン・ボウルト登場。1991年録音アンドルー・デイヴィスも素敵だったが、同じオーケストラでこちら盤石の貫禄と”茜色に黄昏る”サウンドを実現しております。ライヴでもボウルトの解釈はほとんど変わらないんじゃないの?(1976年ロンドン・フィル同時期のスタジオ録音との比較/音質でも遜色はない)細部絶妙の仕上げ、落ち着いた渋い味わい。時に激昂してもすぐに静謐に回帰する懐かしい味わい・・・第2楽章は推進力に充ちて、ここぞという”タメ”もまったく素晴らしい。全45分、こんな渋い大曲も”プロムス”の演目になるんですね。日本じゃさっぱりだけれど、本国ではたいへんな人気なのでしょう。

 Gluckに於けるジャネット・ベイカー(ms)の芯の太い声は圧巻の貫禄。レイモンド・レパードの名はLP時代バロック音楽でよく聴き馴染んだものです。懐かしい。(そういえば「オルフェオとウエリディーチェ」のCDは全部処分しちゃったな)

 トマス・ビーチャムのWagner「タンホイザー」のみモノラル録音。音質はワリとよろしくて、(中間辺り)打楽器(タンバリンか)などはっとするくらい鮮明に立ち上がります。約22分、颯爽と優雅、熱気を込めてドラマが続きました。ロイヤル・フィルはビーチャム時代が黄金期なんです。この時期、(残念!)デニス・ブレイン(hr)は既に抜けていたとのこと。素晴らしいスケールと清涼なる響き。

 出ました、ジョン・バルビローリ。作品がR.Strauss 「薔薇の騎士」でしょ、脂粉が漂うような華やかで甘美な世界が広がります。なんと豪華、ゴージャス、グラマラス。21分ほどの組曲に仕上がっていて、ハレ管弦楽団は絶好調です。こんな立派で優雅な音で鳴ってくださるんだな、指揮者がちゃんとしていると。バルビローリの揺れ、タメが絶妙なる効果を上げております。ああ、これも彼が亡くなる前年の録音だ。妖しいワルツに痺れちゃう。(音質やや落ち)

 Janacekの「シンフォニエッタ」は、ドイツ往年の巨匠ケンペ登場。端正で生真面目、しっかりオーケストラを全開で鳴らせております。アンサンブルの集中や洗練はこれが一番凄い。かなり鮮明なる録音でした。

 ラストはアンコールでして、そっと囁くように粋な「二人でお茶を」。Shostakovichの編曲はそうとう複雑でっせ。ロジェンストヴェンスキーはなかなかユーモラスでした。観衆大熱狂。

(2009年1月2日)

 ワタシのようなマンションの片隅で、ひとり孤独に音楽の缶詰ばかり食べているような人種に、「プロムス」のような本当の音楽のお祭りは理解できないのかもしれません。テレビで2・3回見ただけですが、異様な盛り上がりで、垂れ幕や横幕、風船、着飾ってみんなでエルガーの「威風堂々」を歌う。いやぁ、すばらしいですね。心から音楽を楽しんでましたね。

 この2枚組は、その熱気の一部を伝える記念碑的なCDでしょう。1895年から1995年までの100周年を記念して出されたCDのようです。このなかではロジェストヴェンスキーとベイカー、レパード以外は鬼籍に入った人達ですね。

 Berliozは珍しい曲ですが、いわゆる吹奏楽。よく鳴って気持ちのよい金管です。ラストに拍手が入っているので、この楽章のみ演奏したのでしょう。「タンホイザー」によく似た勇壮な旋律が続いて、お祭りの雰囲気を高めています。

 「くるみ割り人形」も、いかにもお祭り向けの肩の凝らない曲で、プロムスという一種独特の熱気を感じさせる演奏。「ロシアの踊り」における弾けるようなリズムとアッチェランド、「花のワルツ」における豪華で華やかな雰囲気。まさにお祭りであり、素晴らしく暖かい拍手の嵐。日本じゃ知られていないけれど、サージェントってほんとうにイギリスでは人気があったとの話し。

 ボウルトは、個人的に一番気に入っているイギリスの指揮者。エルガーの交響曲第1番は大曲ですが、肩の力が抜けた、自信に満ちて味わいある演奏に仕上がっています。いままで聴いたこの曲のなかでは最高の出来。率直なところ「BBC響ってこんなにいい音してた?」といった感想で、弦の深い響きなど痺れるよう。

 Gluckは一対のレシタティーボとアリアだけですが(第1幕からのレシタティーヴォとアリアだけど、なんという曲かはわからない。というか読めません)、圧倒的な熱気と、迫力にむせるような芯のあるベーカーの歌声。

 唯一のモノラル録音であるビーチャムの「タンホイザー」も、ドイツ音楽に造詣の深いところを見せて素晴らしい。フルトヴェングラーのような異様なアッチェランドなどは見られませんが、当時のRPOの底力を見せつけられる厚い響きです。

 「薔薇の騎士」におけるバルビローリは、想像通りのよく歌う、優雅な節回しが堪能できます。こういった甘い旋律を振らせると、無類の上手さを発揮するバルビローリ最晩年の節回し。

 ケンペもそういえば晩年、イギリスで活躍した人でしたね。「シンフォニエッタ」はもともとスポーツ祭典用の音楽でしたから、こういう場に相応しいですね。オーソドックスでおとなしいイメージのある人ですが、ライヴでは燃えるような熱演ぶりだった、という話しも頷けます。

 ロジェストヴェンスキーも一時BBC響の指揮者をしていました。有名な「二人でお茶を」のShostakovich版ですが、お洒落なアンコールで、ユーモアたっぷり。


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written by wabisuke hayashi