Dvora'k 交響曲第9番ホ短調「新世界より」/
管楽セレナーデ ニ短調(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団)


LPデザイン Dvora'k

交響曲第9番ホ短調「新世界より」(1958年)
管楽セレナーデ ニ短調 作品44(1957年)

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

ネットよりデータ入手

 21世紀は歴史的音源CDの激安値崩れに始まって、やがてネット社会へ、いつのまにかデータで音楽を聴くような時代に至りました。20年ぶりの拝聴ですよ。John Barbirolli(1899ー1970英国)は19世紀生まれ、半生記以上前に亡くなっていて、ほとんどの音源はネットより入手できるようになりました。LPCDが高価な貴重品だった時代は”究極の一枚!”みたいな論議も盛んだったけれど、現在は珍しい演奏会の記録もネットから気軽に聴けるような時代に至りました・・・って、同じネタ幾度使って毎週末の【♪ KechiKechi Classics ♪】更新に行き詰まりました。今週は体調優れず、膨大に溜めたデータ音源点検中に、”貴重な音源だけどあまりに音質が・・・”的感慨嘆息に至ってどんどこ断捨離、挙句苦し紛れの昔馴染みを思い出しました。若い世代はバルビローリなんて知っているのか、そもそもClassic Musicは時代遅れ、オーディオメーカーも立ちいかぬ時代に至っております。

 かつてBrahmsの交響曲第1番ハ短調と人気演目を競ったらしい(未確認情報)「新世界より」。ウキウキとわかりやすい、爽やかな憧憬に充ちた旋律連続してステキな作品ですよ。いまでも人気は健在なんでしょうか。

 第1楽章「Adagio - Allegro molto」から予想外の明晰クリアな音質、21世紀に現役鮮度でしょう。夜明け前の黎明のような序奏からティンパニの迫力、これは全編通して際立つところ。わかりやすい第1主題とそれに応える木管も緊張感に溢れて、想像より速めのテンポに颯爽としております。残念、提示部繰り返しなし、テンション高く推進力が続く劇的アツい演奏。ハレ管も充分な技量と聴きました。最終盤、一箇所彼らしいテンポの落とし方も出現するけれど、全体して一気呵成な爆発であります。(8:40)

 イングリッシュ・ホルンによる誰でも知っている「家路」旋律が有名な第2楽章「Largo」。暖かく懐かしい旋律はいかにもバルビローリ向き。遅いテンポに纏綿と・・・と云った予測は外れて、中庸のテンポにさっくり淡々と流れ良い表現でした。弦も木管も一流の洗練ですよ。中間部の木管アンサンブル旋律は哀しく歌って、弦のオブリガートはデリケート涼やかに泣いております。8:40頃の爆発にも響きは濁らず、各パートのバランスの良さは特筆すべき水準でしょう。(12:25)

 第3楽章「Scherzo. Molto vivace」は賑々しいスケルツォ。ここのキモはトライアングルでしょう。もちろんティンパニは圧巻!金管鳴り切って、決然と力強い情熱サウンドであります。トリオの優雅な三拍子との対比もみごとな緊張感をみせる楽章。(7:48)第4楽章「Allegro con fuoco」の低弦による序奏は迫りくる危機(まるで怪獣の行進)そして決然としてホルンとトランペットによる高らかな第1主題突入がカッコ良い!いつものまったりとした表現に非ず、最後までやや速めのテンポに緊張感を維持して、たった一度出番のシンバルは弱音でもしっかり存在を確認できました。金管のキレ味はオーケストラの立派の技量の証明です。6:30辺りからの弦の甘い囁きも魅惑でしょう。ラスト、金管ティンパニの激打に全曲を力強く締めくくりました。 (11:13)

 管楽セレナーデ ニ短調 作品44(第1楽章「Moderato」/第2楽章「Minuetto」/第3楽章「Romance」/第4楽章「Finale」)は管楽器9本+チェロとコントラバスによる26:46。第1楽章「Moderato」がきっと入場行進なのですね。Mozart辺りのセレナードとは違って、ちょいとしっとり哀愁漂って、バルビローリの表現も柔らかいもの。音質はちょっぴり落ちました。

(2021年2月5日)

Dvora'k

交響曲第7番ニ短調作品79(1957年録音)

Brahms

ヴァイオリンとチェロのための2重協奏曲イ短調作品102(第1楽章のみ。1959年録音)
カンポーリ(v)ナヴァラ(vc)
BX704002

Dvora'k

交響曲第8番ト長調作品88
スケルツォ・カプリチオーソ 作品66(1957年録音)
伝説 作品59より4・6・7番(1958年録音)

BX704012

交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界より」(1958年録音)
管楽セレナード ニ短調 作品44(1957年録音)

BX704022

以上 ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

Disky Communications  HR703992  3枚組で2,090円(2000年に入るとかなりの値下がり状況。不覚)

 チャイコフスキーもそうですが、もともと英PYEの音源をEMIが買い取ったものだと思います。LP時代にテイチクが1,000円盤を出していて、PYE音源を使っていたはず。(ボウルトのシューマンとか、バルビローリでいえばベートーヴェンの交響曲第1・8番、マーラーの「巨人」もあったような・・・。1999年CDで復活)この第7番+管楽セレナードは、かつてLPで持っていたはずなのに、演奏内容は記憶なし。

 交響曲第7番。音の状態が芳しくなくて、響きが濁ります。そのせいでしょうか、ややアンサンブルにまとまりがありません。でも、そこはバルビローリ、旋律をよく歌わせて美しい部分があちこちに発見できます。でも、流れに不自然さがある。第2楽章の静かな木管の味わいは文句なし。

 第3楽章は、第8番の第3楽章に負けない名旋律。早めのテンポでむしろ劇性を強調した演奏でしょう。相当アツい。第4楽章も、ややリキみすぎで、もう少しゆったりとした味わいが欲しいところ。録音のせいでしょうか。3曲の交響曲の中では、これが一番出来が良くない。

 なぜかブラームスが1曲だけ、しかも1楽章のみの収録という不思議な、しかし貴重なフィル・アップ有。(2・3楽章の音源が使いものにならなったのでは?時間的には収録可能)ナヴァラは国内盤もないでもないが、カンポーリは忘れ去られたヴァイオリニストでしょう。1991年に84歳で亡くなったイタリア人で、日本にも来たことがあるそうです。

 録音は少々曇りがち。よく歌ってスケールの大きな音楽は、バルビローリのブラームス演奏の評価にふさわしい美しさ。ふたりのソリストも素晴らしく、カンポーリの明るく輝かしい音色、ナヴァラの滋味深い押さえた味わいも絶妙。(第7番が荒々しい印象だったので、音的にはそうとうな違和感がある)

 交響曲第8番。1957年とは思えない音の鮮度良好。(やはりEMIの音の趣向と少し異なる)この曲、叙情的な旋律がいかにもバルビローリにぴったりそう。泣きの入った節回しを期待したのですが、意外なほどスッキリと端正な響きでした。第2楽章の、なんかもの凄い「ゼネラル・パウゼ」が、一瞬機械の故障か、と不安にさせます。第3楽章も抑え気味で淡々とした味わい。いや、これくらいのほうがむしろ効果的か。

 全体として、オーケストラの響きがやや薄めで、怒濤のような迫力は期待できません。アンサンブルは優秀、ていねいな仕上げが印象的。終楽章のチェロの歌も充分美しいが、腰は軽い。上品で、しっとりとした味わいはあって好印象でした。最後はしっかりと盛り上がって終了。

 普段聴く機会の少ない管弦楽もなかなかよろしい。スケルツォ・カプリチオーソは、スラヴ舞曲の味わいそのもので、ウィンナ・ワルツも上手いバルビローリの本領発揮。いきいきと踊るようなリズムの楽しさ。シミジミとした旋律の歌。これ、凄い名曲でしょう。ホルンの牧歌的な音色も悪くない。

 伝説曲第4番も、暖かいホルンから始まって、いかにもおとぎ話のような楽しさでした。第6番の哀愁の旋律、第7番のため息のような主題、それに絡むヴァイオリン・ソロもはかなげ。

 期待の「新世界」。音の鮮度は、この年代なら充分でしょう。(強奏でちょっと濁りがないこともないが)オーケストラはよく鳴っています。アンサブルも快調。シミジミとした歌い口が馴染みの旋律に似合います。この曲特有に必要な「明日への希望感」も存分に味わえます。懐かし系演奏。力尽くの威圧感はなくて、ときに存分なルバートで楽しませてくれます。

 ラルゴも期待通り。久しく忘れていた「家路」という題名も思い出させます。イングリッシュ・ホルン〜ヴァイオリン〜フルート〜木管の絡み、と続く黄金の旋律。それにしてもこの楽章、中間部の溌剌とした爆発との対比が素晴らしい。何百回と聴いているはずなのに、真の名曲には聴くたびに発見があるもの。

 スケルツォの切迫感〜これもノンビリとした旋律との味わいの対照が、まことに興味深い。力みすぎず、ユルすぎず、バランスのとれた楽章でしょう。ティンパニは強烈。終楽章は、高らかに金管が鳴り響き、弦の旋律も雄々しく響きます。(よく頑張っているが、技術的に凄いオーケストラではない。濁りが見られるのは録音故か?)細かいニュアンスが行き届いていて、スケール大きく、胸も熱くなる演奏でしょう。

 管楽器のためのセレナードも、意外と聴く機会はないかも知れません。音は曇りがち。なんとなく元気がなくて、この曲、もっと溌剌として欲しいもの。個々の演奏家も、あんまり上手くない感じ。(トラックがひとつしかないのは不親切)

(2000年12月30日再聴。改訂)3枚2,000円としては、充分楽しめる演奏か。


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Brahms のダブル・コンチェルトは、一枚物では全楽章収録されているとのこと。(これで、ますます謎は深まる) 第8番のプロデューサーは、マーキュリーのウィルマ・コザートとのことです。(音質良好なのも納得)


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written by wabisuke hayashi