Barber 交響曲第1番ホ短調 作品9(カーター・ニース/リュブリャナ交響楽団)/
ピアノ協奏曲 作品38(アボット・ラスキン(p))/HANSON ピアノ協奏曲(ユージン・リスト(p))


VOXBOX CDX5901 Barber

交響曲第1番ホ短調 作品9

カーター・ニース/リュブリャナ交響楽団

ピアノ協奏曲ホ短調 作品38

アボット・ラスキン(p)/ダヴィッド・エプシュタイン/MIT交響楽団(1976年録音)

HANSON

ピアノ協奏曲ト長調

ユージン・リスト(p)/ダヴィッド・エプシュタイン/MIT交響楽団

VOXBOX CDX5901 録音年不明

 若い頃からへそ曲がりだったので、なるべく珍しい作品に馴染むように、背伸びして音楽を聴いておりました。知名度で音楽を聴かない(当時、高かったCDの価格都合で聴く)ことをモットーとしていたので、1990年LP→CDに切り替える時に、こんなCDを入手しておりました。2枚組2,000円ほど?もう一枚はBarberの管弦楽作品集、アンドルー・シェンク/ニュージーランド交響楽団の担当でした。(既に亡くなったが、彼はBarberのスペシャリストだったんです)リュブリャナ(放送?)響、ユージン・リストくらいは知っていたけれど、他みごとに未知の演奏家であります。MIT交響楽団ってマサチューセッツ工科大学のオーケストラ?ネットでそれらしき情報を拾えました。

 交響曲第1番はブルーノ・ワルターの録音が有名だけれど、演奏会レパートリーとしてポピュラーにはなっていないと思います。これが意外なる名曲!単一楽章4部に分かれて20分弱、やや保守的なわかりやすい作品也。ま、Barberは遅れてきたロマンティスト、なんて言われてますから。勇壮なる大スペクタクル風冒険活劇映画音楽を連想させる第1部「アレグロ」は金管+打楽器大活躍、第2部はスケルツォ、次々と転調を繰り返し、不安げな弦が細かくリズムを刻んで、それは木管に、やがて金管にスケール大きく引き継がれます。変拍子が緊張感を高めているが、前衛的晦渋さは皆無。

 第3部「アンダンテ」は緩徐楽章であり、瞑想的妖しい旋律がオーボエによって纏綿と歌われます。映画で言えば「愛のシーン」か。それはチェロ・ソロに、ファゴット、そして弦に引き継がれ、高まる官能・・・眼下に広がる壮大なる風景。ここ文句なしの美しさ。第4部「フィナーレ」は壮大なる悲劇が重苦しいままクライマックスを迎えて終了〜カーター・ニースって、この人か。リュブリャナ(放送?)響も思わぬ整ったアンサンブルであり、洗練された響き、残響豊かな音質も鮮度充分でした。

   ピアノ協奏曲はジョン・ブラウニングの初演(1962年)なんだな。いきなり不安げなる激しい打鍵でピアノが登場し、交響曲とは異なる気紛れな旋律が絡み合います。難解ではない。アボット・ラスキンもかなりのテクニシャンなのでしょう。オーケストラはやや響きが薄いが、技術的な不備は感じさない。第1楽章は14分以上に及び、繊細だけれど、激しい力感に不足する演奏か。ちょっと緊張感が続かぬ感じです。第2楽章は交響曲同様穏健かつ瞑想的な緩徐楽章であり、ピアノ・ソロは呟くように静謐であります。オーボエ、フルートの絡み合いも美しいが、個性といった意味で”弱い”。

 終楽章は野蛮なソロのラッシュであり、野蛮なら野蛮らしくうんと野蛮にガンガンいってほしかったところ。凄いテクニック(細かく飛躍的なソロ旋律延々)なんだけど、ちょっと”弱い”んだな、全体に。プロコフィエフを連想させるのは、彼の作品を得意としたブラウニングを意識したのか。これはそうとう興奮すべき激しいところであります。

 Hanson, Howard(1896〜1981)は、ほとんど現代の人ですね。1948年の作品。4楽章約20分ほどの作品。まるでCoplandのような平和なる祈りから開始する第1楽章「レント〜アレグロ」。すぐに勇壮なる旋律へ変化し、平易で希望に充ちた世界が広がります。第2楽章「アレグロ」はまるでポピュラー作品のノリであり、第3楽章「アンダンテ」には素朴な語り口の昔話風情がありました。少しずつ哀しげに盛り上がります。終楽章は夢見るような、ちょっぴり中華風なリズムも感じさせて楽しさ一杯。金管の絡みもお見事。平易で希望に充ちた作風であります。

 ユージン・リストは流石に名手ですね。以前聴いた他の録音ではもっと”粗い”演奏の人かと思っていたけれど、知的で音色の美しいピアノでした。この録音も上々。

(2011年9月25日)

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written by wabisuke hayashi