Bach ピアノ協奏曲第2番ホ長調/第4番イ長調
(グレン・グールド(p)/ゴルシュマン/コロムビア交響楽団)


SONY MS 9294 1969年録音 Bach

ピアノ協奏曲第2番ホ長調 BWV1053
ピアノ協奏曲第4番イ長調 BWV1055

グレン・グールド(p)/ウラディーミル・ゴルシュマン/コロムビア交響楽団

SONY MS 9294 1969年録音  オリジナル・ジャケット・コレクション(80CD)(28,420円にて入手)より

 若い(いえ子供の)頃からBach 好きだったが、チェンバロ協奏曲はいまいちな感触だったし、ピアノによる演奏は”どれがどれやら〜”みたいな印象ばかり。やがて古楽器の隆盛とともに作品の魅力に目覚めました。グレン・グールドによる演奏は1980年代、FMエア・チェック時代、そして1990年代LP→CDに切り替えてから、いくつか拝聴はしていたけれど、やはり”目覚め”はなかったんです。これもすべて自分の不徳の致すところ、2009年正月に購入したこのセットにて、ようやくその作品、現代ピアノによる演奏の”凄さ”に気付きました。情けない。余談だけれど、とんでもない値段付いておりますね。

 

チェンバロ協奏曲第2番 ホ長調の原曲は、消失したヴァイオリン協奏曲、あるいはオーボエかフルートのための協奏曲の編曲であると考えられている。第1楽章はカンタータ第169番「神ひとりわが心を占めたまわん」のシンフォニアを移調したもので、第2楽章は同じカンタータのアリアを転用し、第3楽章はカンタータ第49番「われは生きて汝をこがれ求む」に転用された。なお、BWV1053a(オーボエ協奏曲)が存在する。
とは、ネットで拾った作品情報です。

 古楽器派であるワタシはもちろんチェンバロによる演奏を好むけれど、グールドの演奏は作品イメージを一新して新鮮そのもの。旋律が丸裸になったように明晰なタッチ、情感を込めず淡々とつとつと語られ、歌われない。鬱陶しいニュアンスなど無縁であって、乾いて平板なピアノが驚くべき効果を上げております。まったりとタテノリのリズムが喜ばしく、緩やかな感動を呼び覚まします。

 ゴルシュマンのオーケストラが充実しておりますね。21世紀には腕達者かつリズミカルな古楽器アンサンブル頻出して、現代楽器による伴奏なんて笑止な存在になりがちだけど、バロックの範疇を超えた魅力に一役買っておりました。

 イ長調協奏曲BWV1055は、オーボエ・ダ・モーレ協奏曲としてのほうが著名でしょう。こちらテンポ速く、”ノリ”の感触はいっそう快い。ゴルシュマンのオーケストラは表情細かく、ピアノにぴたりと寄り添います。晴れやかで一点の曇りもない第1楽章「アレグレット」、一転!憂いに沈んだ第2楽章「ラルゲット」ではオーケストラの弦が忍び泣いております。グールドの淡々粛々と乾いたタッチは変わらぬが、それが作品の魅力的テイストを強調するんです。

 終楽章は第1楽章の溢れ出る歓喜が復活します。雄弁に語らない、叫ばない。

 所謂従来イメージのバロック・スタイルとは別世界。それでも大Bach の音楽の骨格は崩れないし、作品の神髄から魅力を引き出した希有なる演奏と確信いたしました。音質も良好。

(2010年6月5日)


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written by wabisuke hayashi