Bach オルガン・リサイタル(リヒター 1954年)


Bach オルガン・リサイタル(リヒター 1954年)
Bach

トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
幻想曲とフーガ ト短調 BWV.542
パッサカーリアとフーガ ハ短調 BWV.582
コラール・プレリュード「目を覚ませとと呼ぶ声が聞こえ」BWV.645

カール・リヒター(or)

LONDON  230E 51004 1954年 ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール 中古100円にて購入

 知名度、コンサート・チケットの値段、そしてCDの価格など、音楽の価値になんらの意味も持たない。だから一枚壱万円のCDであろうと、100円であろうと感動の質には影響を与えるはずもありません。感銘深ければ壱万円など安いものだし、100円だったら大儲け(逆も真なり)・・・これ、かつて@2,300で発売されたものなんです。ワタシは以前「200円のCD」というだけで大喜びしていたバカ者だけれど、2004年、広島の中古屋さん店頭の処分箱には、こんなCDも出現したということでした。

 カール・リヒター(1925-1981年)は、そろそろ若い人々には縁遠くなっていますか?1954年なんて、とんでもない「歴史的」時期の収録だけれど、それなりちゃんとしたステレオ録音〜会場残響(というか、オルガン作品は会場そのものが楽器ですから)豊かな、現代に生き残るべき音質です。(じつは「幻想曲とフーガ ト短調」で少々音が揺れるが〜これが100円処分たる所以か)Bach は荘厳なる威厳に充ち・・・って、正直ワタシはオルガン作品演奏の云々を語るような判断基準を持っておりません。小学生の時に初めて聴いたのが「トッカータとフーガ ニ短調」〜ヘルムート・ヴァルヒャ(or)の17cmLP。

 なんという激しく自由闊達、革新的な音楽なんだろう、との驚きは現在でも変わりません。まことに申し訳ないが、ワタシ(の耳)が聴いた数種の録音(LP時代はワルター・クラフトだったのが、現在ではヴォルフガング・シュトックマイヤーの全集CD)でも、この39歳のリヒターでも、受ける感銘の質はほぼ変わらない・・・巨大な音の構築物が峻厳と眼前に出現する驚きの連続。前半部分での切ない悲劇の開始〜フーガ部分での旋律の多彩な発展に胸躍る(美しい!)短調三曲の名作。なんという破格な造形美。

 こんなに美しく旋律が躍動するのに、単色彩のオルガンでは・・・ということでストコフスキー辺りが「もっとBach に親しんで!」と、総天然色の管弦楽編曲をして下さいましたね。(ワタシも大好き)リヒターはひたすら求道心に溢れ、真摯な集中力が息苦しいくらい。新しく音楽に馴染むこども達には説教色が強すぎますか?(いや金八先生の大説教は健在ですよね。ワタシは苦手だけれど)Bach の管弦楽作品、声楽作品も昨今ずいぶんと軽快に、優しい表情に変わっていますよね。

 残念ながらごく最近のオルガン録音は聴いていないのですが、もっとカルく、明るく、親しげになっていますか。ワタシはひたすら立派で真面目な演奏に、胸打ちひしがれ、押し潰され、涙もろくなりながら、自分の小ささ、愚かな行動を悔いておりました。そして「目覚めよ」との神の声が、無神論者であるワタシの耳にも届きました。(2004年12月24日)


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