Bach カンタータ第194番「こよなく望まれし、祝賀の宴よ」
(リューシンク/オランダ・バッハ・コレギウム)


BRILLIANT 99374/2 Bach

カンタータ第194番「こよなく望まれし、祝賀の宴よ」
カンタータ第176番「頑なにして怯むものなり」
カンタータ第89番「エフライムよ、汝をいかにせん」

ホルトン(s)/ブヴァルダ(c-t)/ビークマン(t)/ミール(t)/ショホ(t)/ラムゼラール(b)/オランダ少年合唱団
オランダ・バッハ・コレギウム/フランケンバーグ(ob)フレンケル(ob)グリュツマッヒャー(ob)ヴェスレイ(ob)リンデ(ob)ギール(ob)
ピーター・ヤン・リューシンク

BRILLIANT 99374/2 2000年録音  5枚組1,800円で購入(のち1,180円で目撃)

 2001年執筆在庫原稿を発見したものです。いくつかの中途半端原稿がBach カンタータで残っておりまして、きっと宗教的時節内容に触れないと無意味だ、と(当時)考えていたのでしょう。しかし、Bach のカンタータは聴けば必ず、宗教的畏敬の念がココロの奥から沸き上がります。(ワタシのような無宗教罰当たりオトコでも)技術的に流麗ではないが、素朴な味わいが胸を打ちます。今となってはとくに合唱の弱さ(少年合唱団の不安定さ)や、声楽ソロ・古楽器演奏の個性不足を感じますが、Bach の魅力になんらの劣化もありません。

 リューシンクの全集は、その後スリムボックスにて格安再発されました。少々割高で購入してしまった、この5枚組ボックスは全集中最初に購入したもの。大阪ワルツ堂の値札が貼ってあるが、その店は既に倒産しております。(後年有志で”ワルティ”として再開されたらしいが、ワタシ自身が大阪に行く機会を得ません)せっかくのですので、そのまま数年ぶりに更新掲載。


 1723〜1725年の作品と推察され、オーボエが活躍する3曲を集めた一枚。例の如しで、時節内容、音楽的な特徴はよくわかりません。カンタータもこれだけ揃えてくると、さすがに詳細な解説本が欲しくなるもの。ワタシ個人は、旋律と響きだけでも充分楽しめました。

 「こよなく・・」は、全体2部構成になっている36分ほどの大物です。「軽やかな管弦楽組曲」といった趣の爽やかで短いシンフォニアに続いて、喜ばしい合唱で始まります。少年合唱団が清楚。テナーの牧歌的なアリアも、オーボエとオルガンを中心とするバックに解け合って美しい。

 白眉は、第2部(累計第10曲目)のソプラノとテナーのデュオでしょう。10分近くあって、しかも2本のオーボエの自由なオブリガートが絡み合う。二人とも技巧が目立つような歌い方ではなくて、むしろ木訥で飾りの少ない味わいが、ある意味素人臭くて好感が持てました。

 「頑なに・・」の、冒頭の合唱曲は切迫感ある哀しみが、バックともども魅力的な旋律でしょう。アルトのレシタティーヴォ・アリアは、いつもながら男女か判断に迷うような声の太さ。ホルトンのソプラノは清楚で、良い意味で線が細くて可憐です。バスの堂々たる気品も聴きもの。この曲では5人のオーボエが活躍します。ラストの合唱はあっという間に終わってしまって、物足りない。

 「エフライムよ」は2本のオーボエの説得力あるオブガートが、バスの哀しみを包んでおりました。アルトのレシタティーヴォ〜アリアは、オルガンがしっかりと包み込みます。アルトの貫禄は素晴らしい。ソプラノのアリアには、楽しげにオーボエ・ソロが絡みます。フランケンバーグのソロは、素直でまっすぐな音色がソプラノに似つかわしい。

 全体としてリキみがなくて、教会の自然な残響も快い。古楽器のバックは、もの凄く個性的で切れるような技巧、というものではないが、素朴で軽やかでした。声楽は素人臭いが、それだけに誠実でへんなクセを感じさせないものでした。少年合唱団を聴き慣れると、ほかの演奏が少々重く感じます。