Bach ゴールドベルク変奏曲 BWV 988(ブルーノ・カニーノ(p))
ゴールドベルク変奏曲 BWV 988 ブルーノ・カニーノ(p) DOCUMENTS(aura) 224095/CD10 1993年録音 10枚組1,731円 ブルーノ・カニーノは(Bruno Canino)は1935年イタリア生まれのヴェテランだけれど、どちらかといえば伴奏専門的な地味な存在でしょう。でも、じつは実力者なのだね。
この作品といえば、グレン・グールドの研ぎ澄まされた神経質な世界・・・だけれど、こちらなんと伸びやかで軽快、リズミカルな歌に溢れた明るさか!洗練されたピアノのタッチも、技巧の冴えも文句なし。音質だって極上です。これは(おそらく)ライヴではなくて、スイス・イタリア語放送局の録音なのでしょう。ボックスで買い換えたが、すでに十数年のお付き合いとなるCDであります。音質極上、演奏特徴は上記に言い尽くされていて、76分の長さが全然気にならない、あっ!という間。 ピアノのタッチは軽快だけれど、キラキラ艶々ではない。淡々として、細部神経質に磨き上げたものではないが、あちこちのニュアンスに不足はない。装飾音は豊かだけれど、華美に古典的佇まいを崩すものではない。異形なるテンポの揺れは存在しないけれど、自然な歌があって退屈させない。軽妙であり、明快であり、自在、明晰。 伸びやかで、リズムに暖かいノリがあって、変奏が進むにつれ(クールなまま)聴き手を熱くさせる感興のノリが増殖中。技巧は冴え渡るが、そのことだけを表出させることはない。表情は明るいニュアンスに充ち、変化を続けて厭きさせない。それをほとんど意識させない流れの良さがあって、彼(か)のグレン・グールドの演奏になんらの疑念もないけれど、こちらのほうがココロ安らかに聴けるのはたしかでしょう。名曲を名曲として、親しげな存在として寄り添うような世界。叫ばない、走らない、叩かない。オーヴァーアクションとは無縁。いつまでも素敵な音楽は終わってほしくない・・・ テンポは遅めだけれど、恣意的な設定ではなく、全体に静謐が漂う。ようやく秋らしさ深まって、そんな季節にふさわしい演奏であります。贅沢三昧にも棚中CDで溢れかえるが、贅肉を削ぎ落として残すべきCDであります。 (2009年10月9日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】●愉しく、とことん味わって音楽を●▲To Top Page.▲ |