Bach ブランデンブルク協奏曲全曲(サーストン・ダート版) (ネヴィル・マリナー/
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ1971年)


PHILIPS 426 088-2/089-2 Bach  ブランデンブルク協奏曲全曲(ネヴィル・マリナー/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ1971年) Bach

ブランデンブルク協奏曲 全曲(サーストン・ダート版)

ネヴィル・マリナー/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
ラヴデイ/ブラウン(v)、タックウェル(hr)、ブラック(ob)、モントゥー(fl)、マンロウ/ターナー(bf)、ダート/マルコム/レパード/ティルニー(cem)

PHILIPS 426 088-2/089-2 1971年録音 @1,750円(税抜)*2枚

 マリナーは1924年生まれ、既に80歳を越えているが、活動を続けているのでしょうか。驚くべき大量の録音を残しており、バランス感覚溢れた演奏はどれも粒ぞろい・・・だけれど、少々当たり前すぎて、面白味に欠けるでしょうか。でも、ワタシが少年時代に音楽を聴き始めた頃「マリナー/アカデミー」は、まさに意欲的な表現や使用楽譜(若き日のホグウッドとか、サースト・ダートがブレーンとして参加していた)で注目を集めていたものです。

 マリナーはその後、1980年(PHILIPS)、1985年(EMI)と再録音しており、これが最初のものとなります。(FMで聴いた範囲だけれど)あとになるほど”フツウの演奏”になっていて、この最初の録音こそもっとも意欲的な取り組みであった〜ワタシはCD時代を迎えて、おそらく最初期に(1990年頃)この”高い”CDを購入したはず。(現在なら、セットものがうんと安く手に入る)でも、安い、高いの問題ではない、どれだけ楽しませていただいたか、ということでしょう。だから後悔なし。

 細部のことはわからないが、当時「ダート版」として録音された通常版との違いは、

1) 第1番に第3楽章「アレグロ」が存在せず、最終楽章(「メヌエット」から始まる)が2分ほど短い。ヴィオリーノ・ピッコロ(小型のヴァイオリン、調弦も違うのかも)ソロを編成に欠きます。(現在ではBWV 1046aと呼ばれる)マリナーは「アレグロ」「ポラッカ」も続けて収録しております。
2) 第2番で活躍するトランペットが、当時の楽器では音量バランスが取れないはず(とくにリコーダー・ソロ)ということで、替わりにコルノ・ダ・カッチャ(狩りのホルン)を使用。(現在ではBWV 1047aと呼ばれる。ここではホルン使用)
3) 第4番のリコーダーが聴き慣れたものより、オクターブ高い。(楽器も通常とは違うのでしょう)
4) 第5番第1楽章長大なるチェンバロ・ソロが短い。わずか50秒ほど(約1/3)。これは後にホグウッド盤(1984年)で採用され話題になったが、こちらが先駆となります。(現在ではBWV 1050aと呼ばれる)・・・
こんなところか。(違ったらごめんなさい。不足分ご容赦)

 でも、そんな学究的な問題さておき、当時はまだ現代楽器使用だったんですよね。各パート一人ずつ(だと思う)+名だたる名手をソロに揃えて、いきいき清潔感を湛えて、躍動する演奏こそ新鮮で魅力なんです。(録音優秀)ダートはこの録音の途中、病に倒れて亡くなっております。

 第1番ヘ長調は、全6曲中もっとも大編成で組曲風となっているが、キリリと速めのテンポ、引き締まったアンサンブルで飽きさせません。時に最終楽章って、少々しつこいというか、演奏によってはダレることありませんか?数々の過激なる演奏を聴いた耳にとっては、少々生真面目すぎますか?現在では穏健派ですか?バランスが取れていて、スタイリッシュ、時代遅れの詠嘆的表現も存在しない・・・

 第2番は、あの耳をつんざくトランペットが出現しません。タックウェル(hr)大活躍だけれど、なるほどバランスは良い感じだけれど、慣れとは恐ろしいもので、あの少々やかましいトランペットが懐かしい。ポンマー/新バッハ・コレギウム盤(1984年)では、名手ギュトラーが「コルノ・ダ・カッチャ」をかなりアク強く演奏していて、その存在感に比べると、やはりおとなしい・・・というか、これが「1971年」という時代の表現なんでしょう。テンポは中庸。アンサンブルは正確そのもの。明朗で正しいBach 。いつもはトランペットの陰に隠れる内声部も楽しめます。

 第6番 変ロ長調は編成にヴァイオリンを欠いて、ひときは響きが地味な作品でしょう。コリン・ティルニーがオルガンを弾いていて、これが何とも言えぬ暖かさを表出します。これも「ダート版」のアイディアでしょうか。解釈としては第2番と同じく「テンポは中庸。アンサンブルは正確そのもの」。愉悦感はちゃんとありますよ。白眉は「アダージョ」でして、これは全5曲中もっともココロ打たれる場面でもあります。

 第4番は、マンロウ/ターナーの甲高いリコーダーが華やかで、まるで小鳥が天空高く騒がしく舞っているかのよう。この作品の聴きものはヴァイオリン・ソロです。アラン・ラヴデイは「四季」では素晴らしき自由なソロで驚かせたが、ここではまっとうに超絶技巧を披露して下さっております。三拍子の優雅な、夢見るような楽しい作品ですね。

 第3番は、ワタシとBach との出会いの原点(カラヤン/ベルリン・フィルのLPであった)であり、充実した魅力ある合奏協奏曲であることは言うまでもありません。問題は「二つの和音のみで構成される」第2楽章でして、ここではヴァイオリン・ソナタ ト長調BWV1021〜「アダージョ」が流用されました。縁の下の力持ち的役割だけれど、サーストン・ダートの通奏低音がまったく見事。

 おそらくはもっとも人気のある第5番だけれど、クロード・モントゥー(ピエール・モントゥーの息子。バッファロー・フィルの音楽監督も務めたらしい)のフルートが朗々と深く、清潔感もあります。ヴァイオリン・ソロはアイオナ・ブラウンであり、ラヴディよりいっそう華やかであります。本来であればサーストン・ダートであるべきチェンバロ・ソロは、名手ジョージ・マルコムが担当しており、やはり短縮版ソロではもったいない!もっと聴きたい思いが沸き上がるような、流麗なる演奏。

 バランスが取れ、いきいきとした表情のアンサンブル・・・素直でくっきりとしたリズム感だけれど、あくまで穏健派・・・この印象は全曲を通じて感じたものです。

 蛇足です。このCDもそうだけれど、中古で少々以前のものを購入するとプラケースが厚く、立派ですね。ここ最近では、ずいぶんと薄手で頼りない。こんなところにも”経費削減”の波が押し寄せているようで、少々哀しいような気もしますね。(それだったら紙パックのほうがずっと好ましい)全曲96分ほどでCD2枚とは贅沢な収録だけれど、最近はこれでよい、これ以上聴き手の集中力が続かない、と考えるようになりました。

(2005年10月13日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi