Bach ブランデンブルク協奏曲全曲(M・ブリュール/ケルン室内管弦楽団)Bach
ブランデンブルク協奏曲全曲 BWV1046-1056 ミュラー・ブリュール/ケルン室内管弦楽団/ピックルマイヤー、チャペル(v)カイザー(fl)ヒル(cem)ほか NAXOS 8.554607/8 1999年録音 8枚組4,500円で購入したウチの2枚 2000年は「バッハ没後250年」だったそうで、いろいろと新旧取り混ぜてCDも出てくれたし、演奏会もいっぱいありました。「生誕300年」だった1985年は、ちょうどCD化が劇的だったし、もちろんまだ景気も良かった頃。それに、古楽器の復興が一気に進んだ時期でもありました。 やがて「古楽器にあらずんば、バロックにあらず」とといった荒々しい時代を過ぎ、最近、一時代前のかつての名演奏は見直されつつあります。(というか、ネタ切れの副産物か)リヒターはもちろんのこと、ミュンヒンガーなんかも出てくるからたいしたもの。ミュンシュのブランデンブルク協奏曲もCD復刻されたし、そろそろパイヤールとかレーデルが、大手を振って娑婆に出る日も近いのかも?(なんか悪いことでもしたみたい) 純個人的には、カラヤン(旧盤)、カザルスの演奏が好きだし、折衷主義のコレギウム・アウレウムも激安で復活して欲しいもの。とにかくこの曲はなんでも欲しい。安ければ手当たり次第に買ってしまう。で、このNAXOSのBOXも見かけて即、迷わず買ったもの。 使用楽器で演奏の質が決まるわけでもないが、現代楽器でしょう、きっと。第5番のフルートなんかは、ほとんどヴィヴラートもないが、全体としてどのパートもよく鳴った楽器で、枯れて素朴な響きじゃありません。ミュラー・ブリュールは、ワタシがほんのこども時代の1960年代くらいから存在を知っていたから、たいへんなヴェテランなはず。 直接この曲ではないが、このシリーズに関してはメールで情報や感想をいただいていて、「ハズした」との意見有。な〜るほどねぇ、そう思う人もいるでしょ。アンサンブルの洗練具合、技術的な切れ味最高、速いテンポで推進力も文句なし。録音も新しい。ワタシは概ね気に入りましたが。(おおいに評価甘い。ま、Bach ならなんでも) まず、録音が少々カタい。鮮明だし、明快だし、奥行きも残響も適度、バランスも良い。でも、いわゆるデジタル臭さがある。管楽器に古楽器を取り入れているようだけれど、全体の響きは現代的なもので、鄙びた柔らかさは期待できません。速いテンポは若々しいが、やや軽やかさと・自由闊達さに不足します。つまり演奏スタイルも少々強面。これはミュラー・ブリュールのコントロールの強さと推察されます。
ロバート・ヒルの通奏低音は細かい装飾音が多彩で、全曲を通して最大の功労者でしょう。(第5番のソロは、わざとテンポを落としてじっくり聴かせるところなどニクい)ま、誰でも最初に第1番から聴き始めると思うんですが、編成も一番大きな曲だし、ダレずに保たせるのはけっこう難しいもの。ここでは勢いとキリリとした緊張感ががあって、各パートもじつに美しい。とくに、オーボエの装飾音は最高。 速いテンポで、やや真面目過ぎ、おカタいイメージでしょうか。ワタシは第1番にはユル過ぎる演奏が多いと思うので、気に入りました。で、次、テンポとトランペットの扱いが難しい第2番へ。 これも速い。リヒターのが相当速かったはずなので、違和感はありません。鋭くならないトランペットも渋い。ヴァイオリン・ソロには注目の美しさでしょう。リコーダーがちゃんときこえるのは録音のマジックでしょうか。騒々しく鳴らず、繊細な味わいもちゃんと残っています。そうとうに気持ちよいノリ。 アンダンテはヴァイオリンの特異なヴィヴラートに注目しましょう。オーボエの太い音色、良く歌うリコーダーも文句なしの技量だけれど、クールなヴァイオリンが聴きもの。終楽章はトランペットが主役なのでしょうが、もう極限の技巧で、1960年代のタドタドしい録音を知っているワタシには驚くばかりでした。繊細な味わいもある、これはかなりのアンサンブル。
第3番こそ、ワタシとBach との出会い。(なんやかんやで一番好きな曲)これがかつてない快速テンポ、ぴったり完璧なアンサンブル。(合いすぎて少々冷たく感じるほど)緩みのない緊張感の連続。豪快で動的な通奏低音。もう少し愉悦感とか、余裕があってもいいんじゃない、と言いたくなるんです。一本調子か。 第2楽章の即興演奏は、期待通りのチェンバロの幻想的な即興演奏でした。ここ最高。50秒。終楽章は、第1楽章とまったく同じ感想。それにしても、猛烈に上手い。爽快なのは間違いありません。でももっとニコやかに演奏してほしいが。 第6番は難しい。ゆったり優雅タイプと、リキみテンション型演奏があるけれど、予想通りここでは後者のスタイルで開始されました。とてつもないハイ・テンションで、「なにもここまでチカラ入れなくてもねぇ」なんて思っているうち、どんどん熱を帯びてきて尋常ではない。「この曲はハズれか?」と思いつつ第2楽章へ。 このアダージョが中低音の豊かな良く歌う演奏で、第1楽章との対比が効果的だったんですね。要所を締めるチェンバロがなかなかの腕前とみました。終楽章は、コクのある各パートの音色が魅力的で、良く歌って魅力的。じつは第1楽章の激走は確信犯でした。思い入れタップリに立ち止まるところは「ハっ」とします。
第4番から2枚目。ごていねいにBWV1057の異稿版(ヴァイオリンが抜けたチェンバロ協奏曲)まで収録してくれていました。速いテンポでキリリとした味わいは、先の曲と変わらないが、なんとなくワン・パターンで飽きてくる感じはある。リコーダーの音色も爽やか、アンサンブルの充実感には文句ないはずなのに、何故か窮屈感を感じます。 ラスト、期待の第5番も(先に触れたように)チェンバロの演奏技量に感心するが、全体として肩が凝ります。バロック音楽って、もっと演奏者個々人の自発性があって欲しいもの。ミュラー・ブリュールの強力なリーダー・シップありすぎで、これはテンポが速い遅いの問題ではありません。もっとハズむような、ウキウキするようなリズム感が欲しい。
「三重協奏曲」は、Bach としてはいまひとつ楽しめない曲で、そう聴く機会はありません。印象は既存の曲と変わらない。「曲ごとの個性を描きわける」ことになっていないのかも知れません。 それにしても@600を切って、この曲の新録音を買えるようになったのは感慨深いもの。しかも収録たっぷり。様々な個性的演奏で、お気に入りの曲を聴けるのは幸せなことなんです。(2001年4月20日)
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