Bach フルート作品集(ジュリエット・ユレル(fl)/
アンサンブル・レ・シュルプリーズ/マリ・ド・ヴィユトレイ(s))


ALPHA358 Bach

管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
マタイ受難曲 BWV244〜第2部アリア「愛よりしてわが救い主は死にたまわんとす」
無伴奏フルート・パルティータ イ短調 BWV1013
復活祭オラトリオ 「来い、急げ、走れ、逃げまどう者たちよ」BWV249〜アリア「魂よ、あなたの香油は」
フルート・ソナタ ト長調 BWV1038
コーヒー・カンタータ「そっと黙って、お喋りなさるな」BWV211〜アリア「ああ、なんて美味しいの、コーヒーは!」
カンタータ「我は満ち足れり」 BWV 82〜アリア 「我は満ち足れり」

ジュリエット・ユレル(fl)/アンサンブル・レ・シュルプリーズ/マリ・ド・ヴィユトレイ(s)

ALPHA358  2017年録音

 

Juliette Hurel(1970-仏蘭西)はロッテルダム・フィルの首席、ご夫婦ともフルートの名手なんだそう。素直でクリアなモダーン楽器、ソロが活躍するBachの名曲を取り揃えて、ありそでなかった魅惑の一枚。オーケストラの中に出現するフルートは好きだけど、協奏的作品はあまり好みじゃなくって、例えばMendelsshonやらKhachaturian、著名なヴァイオリン協奏曲をフルートで演奏したものがあったでしょ?あれはどーも陰影に乏しいというか、全曲拝聴するのがツラかった記憶がありました。Franckの甘美極まるヴァイオリン・ソナタ イ長調のフルート版も然り。

 閑話休題(それはさておき)ほの暗い憂鬱を湛える史上初(ほんまか?)フルート協奏曲である管弦楽組曲第2番ロ短調はリズリカルに、フルート一本で巨大な宇宙が広がるパルティータ イ短調、ソロは技量を問われる難曲中の難曲(そして傑作)これを爽快軽快、流れよく表現して下さって文句ありません。しっとりとしたソプラノと絡む声楽作品も上手い選曲に感心いたしました。どれも馴染みの作品旋律ばかり、堪能いたしました。(「音楽日誌」より)

   ”素直でクリアなモダーン楽器”とエエ加減なことを書いたけれど、このアンサンブルは古楽器youtubeを見るとわかります。ジュリエット・ユレルはメジャーオケの首席、古楽器と使い分けているのでしょう。ヴィヴラートほとんどなく、骨太なしっかりとした厚みのある音色で魅了します。管弦楽組曲第2番ロ短調のバックはほとんど各パートひとりと想像されるスッキリとした響き、古楽器初期にあった異形なテンポ設定とか不安定な技巧・アンサンブルなど今は昔、颯爽としてオーソドックスに引き締まったサウンド。

 この作品との出会いはパブロ・カザルス/マールボロ音楽祭(1966年)あれは大きな、詠嘆に揺れる表現、オルヌルフ・ガルブランセン(fl)のヴィヴラート過多には閉口した記憶が・・・こちら過激な符点リズムを強調せず、テンポ設定は常識的、ややオンマイク鮮明な音質はソロ・バックの存在を浮き立たせて見事であります。(6:32-1:36-2:50-1:41-3:13-1:07-1:30)

 Mailys de Villoutreysは仏蘭西の現役ソプラノらしい。Bachのアリアを4曲担当して、ユレル(fl)とともにメインの存在となっております。「愛よりしてわが救い主は死にたまわんとす」のバックはフルート+イングリッシュホルン(コールアングレ)2本、低弦のない一種浮遊するような伴奏に乗って、ソプラノはかなり強靭な声質に説得力充分でした。

 無伴奏フルート・パルティータ イ短調は唯一無二、凄いスケールの作品。Debussyのシランクスは和の幽玄を感じさせる名曲だけど、音楽の規模大きさは桁違い。ユレルの表現は雄弁であり、モダーン楽器と勘違いしたことも言い訳したいくらい。Allemande(3:53)-Corrente(4:05)-Sarabande(5:13)- Bouree anglaise(3:02)わずか15分ほど、巨大なドラマであります。

 アリア「魂よ、あなたの香油は」はフルート・オブリガート付きのしっとり物哀しい歌が延々。他はポジティヴ・オルガンのシンプルな通奏低音のみ。ソプラノとフルートは対等な主役であります。(9:41)フルート・ソナタ ト長調 BWV1038は真贋論争もあるらしい緩急緩急のトリオ・ソナタ、ヴァイオリン・ソロ、チェロの通奏低音との絡みが極上に美しい、優雅な作品。このCD収録中いちばん気に入りました。(2:48-1:00-1:38-1:30)

 「コーヒー・カンタータ」は誰でも知っている(これも)哀しげな旋律はソプラノとフルートの絶妙な絡み合い、内容はユーモラスなもの。マリ・ド・ヴィユトレイの声は凛として芯のある声質、もちろんフルートも負けておりません。全曲聴きたいところ。(4:23)ラスト「我は満ち足れり」この旋律も弦のアルペジオに乗って、フルートがなんとも雄弁かつ哀愁の魅力。「マタイ」の「主よ、憐れみ給え」にも似ております。(6:46)主役はジュリエット・ユレル(fl)、そして同じくらいソプラノがしっかり活躍する、ようできた”企画もの”でした。

(2019年11月17日)

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written by wabisuke hayashi