Bach 鍵盤のための協奏曲全曲(クリスティアーヌ・ジャコテ)Bach チェンバロ協奏曲
ニ短調 BWV1052
クリスティアーネ・ジャコテ/クリスティーネ・サルトレッティ/ニコル・ホステットラー/レオノーレ・クリンケルフス(cem)/ギュンター・ヘラー (fl)/ウルリヒ・ティーメ(リコーダー) VOXBOX CD3X 3018 1978年録音他 3枚組2,450円で購入 LP時代にはレパードの演奏が気に入っていて、1990年代初頭にLPを全部処分したあと、ほぼ最初に買ったCD。お気に入りの曲です。いつもながら古楽器であろうと、ピアノであろうとなんでも良くて、安かったら即CDを買う曲集の代表的なもの。この度、数年ぶりに聴いて仰け反りました。もうステレオの前から動けない。懐かしくて、楽しくて。 知っている曲ばかりでしょ?BWV1057はブランデンブルク協奏曲第4番とほぼ同じ曲だし、BWV1054・1058・1062はヴァイオリン協奏曲の編曲(もしくはその逆)、もちろんBWV1065はご存知ヴィヴァルディの「調和の幻想」をアレンジしたもの。BWV1060は「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」としてのほうが、ずっと有名でした。ま、とにかくあちこちで聴く機会が沢山で、馴染みの顔ばかり。 クリスティアーヌ・ジャコテはPILZレーベルでもかなりのBach 録音を残していて、廉価盤には常連さんなんです。「ゴールドベルク変奏曲」ではイマイチ不満だったが、録音もわりと良好なせいか、ここでは好調。録音年代的に(ヴァルヒャとか、古くはランドフスカみたいに)金属的だったり、モウレツによく鳴るチェンバロではないが、バックはもちろん現代楽器。演奏スタイルは中庸なテンポを守って、むしろドッシリとした安定感がタップリ。 フェルバーのバックが立派なんですね。瑞々しくて、少人数の爽やかさは残しつつ薄さを感じさせません。最近はもっと少人数(各パートほとんどひとりずつとか)のバックが主流かも知れませんが、ここではもう少し響きが艶やか。チェンバロを包み込むように控えめだけど、主役はこちらかも知れません。現代の耳にはやや浪漫的すぎるが、時代錯誤と呼ばれようと、聴き慣れているから、こちらのほうが安心できる。 ジャコテを始めとするソリストに文句なし。バックと息が合って、急いたところもない。コープマンなどにみられる即興的な装飾音には不足していて、オーソドックスにすぎるかも知れません。楽章の終了時には、リタルダンドが掛かるのも懐かしい。それでも、いわゆる第1番ニ短調BWV1052から「ノリ」を感じます。ハ長調BWV1091で、チェンバロが左右に掛け合うところのハズむような楽しさ。それに呼応する弦の軽やかなこと。 もともとBach が学生さん達と楽しく演奏するために作った曲らしいから、愉悦感が感じられないとダメなんです。3日間ほど、あちこち曲を替えながら心安らかに過ごしました。 「どの曲が一番好き?」と訊かれれば、少々悩んでハ短調BWV1060(2台のための)と、ハ長調BWV1064(3台のための)を上げましょうか。ハ短調における劇的な緊張感、ハ長調は晴れやかな楽しさにカラダも心も揺れそうな快感。この2曲、ヴァイオリンのみで編曲されている演奏もあって、それも楽しい。(ハ短調はクレーメルで、ハ長調はルツェルン・フェスティヴァル盤を聴いたことがある) BWV1060・1061・1064・1065の録音年がわかりませんが、こちらのほうが鮮明なのであとの録音でしょう。チェンバロの音色はデジタル臭く録音されると聴いてツラいが、全体としてアナログの柔らかい音質で、VOXとしては出色。全集というのは一応間違いではないけれど、ニ短調(いわゆる第8番)も収録して欲しかったところ。ブランデンブルク協奏曲第5番もほんとうはチェンバロ協奏曲なんですけどね。(マリナー/キプニス盤〜LP時代〜には両曲とも収録されていた) この価格でもけっして高くはないけれど、この曲集は最近、ミュラー・ブリュール盤(NAXOS)、コープマン盤(ERATO)、もちろんBRILLIANT等でも、うんと廉価で購入可能となりました。 (2001年3月30日)
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