Bach ブランデンブルク協奏曲全曲
(エイドリアン・ボウルト/ロンドン・フィル)


EMI 6356572 Bach

ブランデンブルク協奏曲全曲

第1番ヘ長調 BWV1046
ロジャー・ウィンフィールド、ロバート・カッターモレ、モーリス・チェッカー(ob)/ジェフリー・ブライアント、コリン・ホルトン(hr)/ニール・レヴェスリー(fg)/ロドニー・フレンド(v)

第2番ヘ長調 BWV1047
ロジャー・ウィンフィールド(ob)/ロドニー・フレンド(v)/デヴィッド・マンロウ(リコーダー)/ゴードン・ウェブ(tp)

第3番ト長調 BWV1048

第4番ト長調 BWV1049
ジェラルド・ジャーヴィス(v)/デヴィッド・マンロウ、ジョン・ターナー(リコーダー)

第5番ニ長調 BWV1050
ダグラス・ウィッタカー(fl)/ロドニー・フレンド(v)/レイモンド・レパード(cem)

第6番 変ロ長調BWV1051

エイドリアン・ボウルト/ロンドン・フィルハーモニー

1972年録音 EMI 6356572

 本日誕生日。華麗なる加齢はバランス感覚、”折り合いをつける”技術は身についても、変革の意欲、集中力継続力体力(そして情熱)の減退に嘆息するばかり。生まれたばかりの息子を連れて親父の還暦祝いに、札幌に向かったのはもう30年ほど前?自分がその年齢に接近しているのも信じられぬ時の流れ、こうして安易に馴染みの作品、32年前に亡くなった指揮者、43年前の録音を聴いているのも後ろ向きでしょうか。演奏者のクレジットを写すだけでも疲れが・・・(昔懐かしいメンバーがずらり)

 いえいえ「温故知新」。レオンハルト、ブリュッヘン、クイケン兄弟の「ブランデンブルク」(1976/7年)に仰け反って爾来、”バロックは古楽に限る”そう確信して一世代経過、古楽もエエけどモダーン楽器だって悪くない、相反するものに非ず、各々愉しんだらよろしい、そう宗旨変えいたしました。Bach は演奏スタイルやら楽器、編曲にもびくともしない!骨格しっかりして作品真髄の魅力は失せぬもの、いや増す真価に驚かされる日々であります。例えばカラヤン(1964年)、クレンペラー(1960年)とか、改めて目が醒めるほど鮮烈。

 大きな大きな、悠然と貫禄あるBach 。所謂”小編成”?一パート一人の古楽器スタイルに耳慣れると、そのゴージャスな響きに驚かされます。21世紀、快速アクロバティックな演奏に比べられないけど、テンポだって特別遅いワケじゃない(第3楽章Allegrettoはむしろ速め)。むしろ前のめりな推進力を感じさせる第1番ヘ長調であります。この作品のキモはホルンでっせ、遠目から深々と響き渡って古楽器スタイルにはない存在感であります。第Adagioに於けるオーボエ、ヴァイオリンの纏綿情感込めた歌はモダーン楽器ならではの味付け。

 第2番ヘ長調も大柄やなぁ、豊かな響き続きます。ゴードン・ウェブの朗々としたトランペットは(厚い)オケとのバランス良好です。英国往年の古楽器の雄・デヴィッド・マンロウ(1942-1976)のリコーダーの存在感は清潔そのもの、際立った存在感は録音のマジックかもしれません。中庸なテンポ、慌てず騒がず堂々とした、そして(例の如く)前のめりの意欲に溢れる推進力。第2楽章Andante緩徐楽章は(どの作品も)浪漫の色濃い情感に充ちて、今風ではないけれど時代錯誤なテイストでもない、ここではもの哀しい風情たっぷり堪能いたしました。終楽章のトランペット・ソロはスムース余裕でっせ。”いかにも苦しい!”ナチュラル・トランペットの突出した粗野な音色を懐かしく思い出しました。

 小学生の頃から大好きな第3番ト長調 。これもスケールは大きい、ゴージャス・マイルドな弦が会場いっぱいに響き渡って〜といったところ。テンポは中庸、慌てて咳いた印象なし。リズム感に締り有、重くもならない。例の第2楽章Largo(2小節のみ)のチェンバロは昔懐かしい”よう鳴る”モダーン・チェンバロが絡みます。第3楽章Allegroも風情変わらず、悠々と柄は大きくても推進力、熱気を失わない。もちろん、最近は古楽器ばかり聴くことが多いけれど、これが一番印象違うかも。巨大。

 第4番ト長調に再びマンロウ登場、これ以上ない!というくらい清潔な存在感を主張しております。この作品のキモは超絶技巧なヴァイオリンであって、懐かしいジェラルド・ジャーヴィス(東京都響とか大阪フィルでもコンマスを務めた)が担当しております。温かくも有機的親密な音色にほっといたします。もちろん技術に文句などあろうはずもなし。ここでは御大ボウルトもソロに任せているのか、そう”大きい”とは感じません。第2楽章Andanteは少々深刻過ぎかな?このウェット感も個性でしょう。終楽章Prestoにも優雅な爽やかな風情漂いました。

 最大人気の第5番ニ長調の主役はもちろんチェンバロ、レイモンド・レパード(1927-)担当だったのですね。録音当時はバロック専門なイメージでしたよ。現代主流の古楽器とは異なると類推するけれど、時代錯誤な金属的サウンドに非ず。名残惜しいテンポの揺れも節度があっておみごと。ヴァイオリン担当はロドニー・フレンド(1940-)、Douglas Whittaker(fl)(ダグラス・ウィッタカーという読みはエエ加減)いずれもロンドン・フィルのメンバーはアンサンブルに溶け込んで素直、個性を突出させません。ここでも第4番同様、あまり大柄な響きを強調せず、ソロを活かした(任せた)統率になっておりました。

 第2楽章Affetuuoso(情感を込めて)は意外なほど淡々として、終楽章Allegroはしっとりと柔らかいリズムに乗っておりました。

 ラスト第6番 変ロ長調。これはとんでも!大編成ゴージャスな響き、全曲中ヴァイオリンを欠いてジミな作品を思いっきり大きく、朗々と歌ってスケールが大きい。最近の古楽器に耳馴染めば、これはほとんど別作品でっせ。第2楽章 Adagio ma non troppoは各パート一人、静謐な緩徐楽章也〜それでも纏綿と歌って、スケールが大きいことに変わりはありません。終楽章Allegroに豪華な響き復活、大柄、時代錯誤な風情かも知れぬけれど、なんかとても立派もの聴いちゃった、といった手応えでした。

(2015年3月7日)


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written by wabisuke hayashi