Andre Previn's Music Night (1972年)


EMI ASD3131 Signature Tune (Andre Previn's Music Nightのテーマソング)

March: Orb and Sceptre (Walton「宝玉と勺杖」)

Scherzo: The Sorcerer's Apprentice (Dukas「魔法使いの弟子」)

Adagio in E minor (Albinoni/Giazotto「アダージョ」)

Overture: Hansel and Gretel (Humperdinck 序曲「ヘンゼルとグレーテル」)

Choreographic Poem: La Valse (Ravel 「ラ・ヴァルス」)

Slavonic Dance No. 9, Op. 72 No. 1 (Dvora'k「スラヴ舞曲第9番」)

アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団

EMI ASD3131  1972年録音

 これ、こども向け音楽番組の収録でしょうか。プレヴィン当時43歳、若々しい次世代の代表としてロンドン交響楽団との蜜月を感じさせます。前編を通して、キレのある躍動と希望に溢れておりました。ややオフ・マイク、残響も低音も充分な瑞々しい音質。プレヴィンが他では録音していないレパートリーがあって注目の一枚。

 勇壮なホルンから始まる冒険活劇風「Signature Tune」からワクワクするような始まりです。Waltonの「宝玉と勺杖(やくじょう)」はプロムスには欠かせない、ウキウキめでたい作品、Wikiによると1953年6月2日、エリザベス2世の戴冠式のために作曲された行進曲とのこと。(勺杖とは「王のつえ」のことらしい)ま、「威風堂々」と雰囲気クリソツに華やか、喜ばしい行進曲であります。

 Dukas「魔法使いの弟子」は、ディズニーの「ファンタジア」(1940年)以来こども向け作品として人気抜群。テレビで演奏をみるとけっこうな大規模管弦楽であって、わかりやすいリズムの繰り返し(箒がバケツを運ぶ!)を華やかにていねいに仕上げて堂々たるスケールであります。一転して荘厳な雰囲気たっぷりな「アダージョ」は映画「審判」(1962年オーソン・ウェルズ監督)に使われてから有名になったらしい。バロック音楽というより哀しき浪漫に充ちた風情、プレヴィンはしっとり、この出来はフツウなものでしょうか。

 Humperdinck 序曲「ヘンゼルとグレーテル」はご存知グリム童話でして、欧州ではこどもが最初に経験するメルヘン・オペラ(1893年初演)なんだそう。Wagnerの雰囲気に似て、親しみやすく優しい、夢見るような旋律であります。Ravelの「ラ・ヴァルス」は大衆的なウィンナ・ワルツを(まるで夢のなかのように)幻想的、気高く仕上げて、しかも予定調和に終了させない一癖も二癖もある名曲!この辺り、プレヴィンの洗練も極まった上品かつ粋な完成度であります。

 スラヴ舞曲第9番(作品72-1)は、優雅な中間部を挟んで躍動するリズミカルな作品。ラストを飾るに相応しく、プレヴィンの表現はあくまで穏健そのもの。

(2016年6月26日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi