R.Strauss作品集(アーベントロート)


R.Strauss

交響詩「ドン・ファン」作品20(1952年録音)
交響詩「死と変容」作品24(1949年録音)
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28(1950年録音)

アーベントロート/ライプツィヒ放送交響楽団

TAHRA TAH138  333円

 アーベントロート(”夕映え”という意。美しい)は、その後数年経ってもちゃんと聴いておりません。Berlin Classicsのセットも買ってあるのにね、どうも濃厚すぎ、重すぎ、クド過ぎ・・・といった先入観があって腰が重い。それにしても、以下の自ら数年前の文書はひどいもの・・・・ようはするに、R.Straussに馴染んでいないんだね。ずいぶんとCDは手許にあるけど、正直「!」とはなっていない。

 330円の投げ売りね。ああ、どこでも手に入るよ、と思っていたら、いつのまにやら珍しいCDになっちゃいましたね。「ドン・ファン」も「ティル」も、もっと美しく、厚みもあるオーケストラで、粋にやるべきなんでしょうか。カラヤン/ウィーン・フィル(1960年代のDECCA録音)辺りかな?念頭にあるのは。ライナー/シカゴ響の徹底的に絞り上げた、剛腕演奏も昔なじみか。じゃ、アーベントロート爺は?

 「超頑固爺さん風の風貌(いい顔ですねぇ、意地悪そうで)」(某kechiサイト談)〜なるほど、ジャケット写真もそうだけれど、演奏も強面。アクセントがきつく(明快とは言わない)て、アクもある。早めのテンポで重量級。軽快とは縁遠いが、重いから慣性が付くと止まらないよ、状態か。オーケストラの響きに甘さはないし、頼みのホルンはちょっと豪快でこれは決まってます。

 でも、粋じゃないな。聴いていて少々暑苦しい。カッコよくない。表情はもちろん不機嫌そのもの。もちろん音質問題もありましょう。「死と変容」は音質が更に落ちます。でも恐ろしい雰囲気はいっぱい有。静かに静かに恐怖は進行し、ティンパニの一撃で心臓がギクリ。なに?このノーコーなる味わいは。ここ最近の若いもんには、このコクと粘りが足りまへんなぁ、なんて、思わずご隠居風感想も出ます。妙にナマナマしくて、静謐とか、落ち着き方面とはちょっとちがう方向に行ってます。

 「ティル」にはもっとユーモアが必要でしょう。いかにも難しそうなホルン、その旋律を受け継ぐ木管、剽軽なる弦。アンサンブルのテンションは高いと思います。相変わらず粋ではないし、表情が厳しいが、これはずいぶんと緊張感の高い演奏ですね。ライプツィヒ放響って、こんな達者なオーケストラでしたっけ?

 変幻自在なる表現で、軽妙さはともかく、気まぐれな表情の変化は細かいワザ。3曲中ではもっとも完成度が高いね。けっこうアツくて、グイグイとした推進力は相変わらずヘビー級です。思いっきりティンパニを鳴らすのは指揮者の意向か。結論的に「濃厚すぎ、重すぎ、クド過ぎ」とは言い過ぎだけれど、あながち印象の方向としては間違ってはいない・・・・R.Straussを聴くんなら、もっと新しい、サッパリとした録音にしましょう。

 ああ、この重さに耐えられる若さが欲しい。(2003年5月23日)以下、以前の文書はそのまま掲載。

 


 アーベントロートは名前だけは知っていましたが、なかなかCDを買う機会を得ませんでした。Berlin CLASSICでけっこう安く出ているんですけどね。最近、TAHRAでかなり音源が復刻されていて、なぜかこの一枚だけ投げ売り価格(3枚1,000円)で出ていたので、試しに買って初めて聴いてみたところ。

 いい選曲ですね。たとえばマーラー、ストラヴィンスキーにしても同世代の演奏家に愛され、作品を取り上げられて、現代のコンサート・レパートリーに定着していますよね。R.シュトラウスも自作の録音がたくさん残っている、ごく最近の人。現代の音楽会における、新しい音楽の不在ぶりは少々心配です。閑話休題・・・・・・・・・・。

 「ドン・ファン」がわりと音の状態が良くて、楽しめる演奏でしょう。早いテンポが颯爽としてカッコイイ。ゆったりとして静かな部分との大きな対比の効果。アクの強さ。金管の絶叫やティンパニの迫力。このオーケストラは、ステレオ時代になってからのケーゲルの印象が強いのですが、当時のほうが上手いような気がします。各パートの美しさはたしかです。

 「死と変容」はかなりどんよりとした録音。「ドン・ファン」でも感じたのですが、この人は旋律の歌わせ方はていねい(というか、しつこいくらい)で、木管にせよ、弦にせよ説得力が深い。そして、ティンパニの一撃の衝撃。それを契機にオーケストラを緊張感に追い込んでいき、テンポも上がり、絶頂を迎えます。効果の作り方の巧妙さ。

 「ティル」は、冒頭辺りのホルン・ソロでだいたいオーケストラの雰囲気が読みとれるのですが、満足できる深い音色から、即速いテンポで各楽器の受け渡しをしていって、その流れの良いこと。そして、やはり打楽器の一撃を合図に、金管の爆発を伴って熱くなる。テンポはかなり揺れるのですが、古臭さは感じさせなくて、語り上手な現代性を感じます。

 相当な個性。音の状態はまぁまぁ。やはりひとクセ有。

 アーベントロートは、その超頑固爺さん風の風貌(いい顔ですねぇ、意地悪そうで)、「表現主義」との噂、からコテコテの前近代的・大時代的表現、異様に大きなスケールを想像していたのですが、違いました。たしかな味わいある個性が感じられて、これからCDを集める楽しみが増えました。


 その後、Berlin CLASSICの5枚組(009112BC)を2,470円で買いました。が、まだちゃんと聴いておりません。反省します。(2000年7月15日更新)  


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