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待兼交響楽団第20回定期演奏会(いずみホール)


2008年2月24日(日) 14:00開演〜いずみホール(京橋)

Mozart

交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」

Mahler

交響曲第9番ニ長調

井村誠貴/待兼交響楽団

 なんと半年以上ぶりのナマ演奏体験。せっかくの演奏会多数開催される関西に転居したのに、肝心の聴き手が、心身共に不調で演奏会場に出掛ける意欲が出ません。言い訳させていただければ、演奏レパートリーがややありきたり、ということもありました。今回お誘いただいたのが、なんせMahler でしょ、行かいでかっ!と十数年ぶりのいずみホールへ、寒風のなか出掛けました。待兼交響楽団って、阪大のOBオーケストラらしいです。ほぼ満員だったが、聴衆はやや高齢化が進んでいたか。

 1,000人くらいのホールか、壁、座席すべて木製で響きも極上です。「リンツ」始まりました。左手にコントラバス、その後ろにはチェンバロ(音は聞こえなかった)。第2ヴァイオリンが右手の対向配置。井村さんは若手だし、どんな先鋭な表現で行くのか、と期待したが、意外とオーソドックスでたっぷりとしたものでした。小さめの編成、演奏者も未だエンジンが暖まっていないのか、響きがちょっと濁ります。最初はノリも足りないかな?Mozart って弾き手のセンスとか、相性とかモロに出るんでしょうね。最終楽章あたりで、ようやく勢いが乗って参りました。

(20分間休憩/座席ご近所おじさんの蘊蓄話がはずかしい。お姉さま達の会話が鬱陶しい。演奏中、袋から飴を出すのが喧しい)

 Mahler の第9番は、ナマ初体験でした。

 チェロ、ホルン、低音ハープの断片的な旋律の開始から、妖しいScho"nbergを連想させます。骨太でテンポ設定はややゆったりめ、若い世代だから颯爽とスタイリッシュ、急いた勢いを予想したが意外や浪漫的な表現であります。弦の配置は右手にヴィオラ、その奥にコントラバスが配置され、第1/2ヴァイオリンが並ぶのには理由があるんですね、CDでは気付かないが、主旋律の主導を第2ヴァイオリンから開始することもあるんです。

 久々のナマ体験は、オーディオ論議の空しさを感じさせるくらい、弱音の繊細さと最強音大爆発対比の鮮やかさ。大きな編成の大曲だけれど、じつはすべての楽器が参加する場面は少なくて、各々の旋律を担当するパートに意味深い味わい有。大好きな作品だけれど、眼前で響き渡る楽曲には格別の感銘がありました。ティンパニの鋭いリズムのくさび、もだえ苦しむようなホルン、わざと薄っぺらい加工をした金管の効果。木管はひじょうに優秀だと思います。

 弦は複雑な動きをして単純な5部ではなく更に複雑に入り組んで、ソロも登場します。井村さんの指示は明快であり(指揮棒はない)、迫力も充分。終楽章、練り上げられた弦を中心とした響きに聴衆は酔いしれました。個々の技術的な不備を指摘することは可能だろうが、日本のアマオケがここまで演れる!という驚愕。どこに出したって恥ずかしくないですよ。

 繊細な弱音で音楽は消えゆきます。無神経なる”フライング・ブラーヴォ”なし、静謐が支配した会場に少しの間を置きながら、やがて盛大なる拍手が会場を包みました。ナマ演奏への復帰を検討しております。演奏会終了後、Syuzoさんと飲み屋で余韻を楽しんだものです。

written by wabisuke hayashi